川上未映子

雑感

2015.03.02

おかっぱは美容室エルメで、ふたたび

 いつだったっけ、少しまえに髪型をどこでどうしてるのかの質問が多くて、ここですよってことをブログに書いたのだけれども、ご紹介した美容室エルメ。このあいだ「や、ミエコさんのブログを見てこられるかたがすごく多いんですよ……何ヶ月もたってるのに、未だに……」なんて伺って、とっても驚いた!

 美容室ってだいたいもうみんな行くところって決まってるし、新しいところに行くモチベーションってなかなか湧いてこないのに……。「そうか、美容院難民、あるいは過渡期の人が多かったのね……」とひとりうなずいていたのだけれど、先日もエルメに髪を切りにいったら、なんとわたしのブログをみて来院していたかたが偶然にお二人もいらっしゃって、どきどきしました。わたしの髪を切ってくれているのは武田くんというオーナーなのだけれど、「で、みなさんやっぱりおかっぱに?」と伺うと、「あ、そういうわけではありません」ということらしいのですが、長くても短くても、おかっぱでもパーマでも、うれしいのは一度いらっしゃったかたが続けて通うようになってくれてるってことで、それってやっぱりうれしいですよねえ(しみじみ)。

 そして何が素晴らしいって、エルメには「ママズデイ」という日が設けられていて、お母さんが髪を色々しているあいだ、近くに赤ちゃんや小さなお子さんが遊べるスペースがあって、もちろんスタッフのかたがちゃんと見ててくださいます。そう、育児中、小さなお子様も一緒に出かけられることって涙がでるほどありがたい……。保育園に預けているかたならまだ自由がきくときもあるけれど、ずっと一緒のお母さんは美容室になんてなかなか行けないわけで、ぜひ、ご予約してみてくださいね!

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 これは髪を切った直後です。形は基本は前下がりで、後ろは刈り上げにならないていど、横は耳にかけるとショートになるっていう感じです。前髪は眉下ぎりぎりで毛先をちょっとばらしてもらってます。うねるくせ毛なので、ちょうどいい具合にストレートパーマをかけてもらって、色は何色っていうのかわからないけど、赤みを抑えたブラウンで、暗くも明るくもないって感じ。前髪と横髪のつなぎめのぐるりんってやつが武田くんがすごく上手で(上手ってそれはま当然か……><)、ここの形が違うと、まったく感じが変わってしまうのです!超絶・絶壁&しゃもじ&書籍みたいな頭のかたちのわたしにいつも全体的な、立体的な、まるみを与えてくれてありがとう!!

 

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 それで最近の色ものヒット! アイラインとかマスカラの色ものってぼやーっとしてあんまりはっきりしないんだけれど、今回のRMKはすっごくいいですよん。下まつげはもちろん、上につけてもほんとにばさばさ色がつきます。今回は上下の二色展開で、わたしは黒×ピンク、茶色×オレンジ、のふたつを購入しました。雑誌でもめさめさ推されてるのでどうしよっかなと思われてる人、こればっかりは買いですよ。まぶたにシャネルの228テティセカンボンのピンクを全体に指で塗って、RMKのピンクのマスカラを上下に塗ってます。今回はファンデを塗ってない状態で写真で撮ってもこの発色、きちんとフルメイクにすればさらにかなりパッキリするのではないかしら。

マスカラもアイシャドウもなし、カラーのラインだけ引くのもきれいだな、ポップだな、と思って探しているのだけれど、いい感じのアイラインがなかなかないので、リップペンシルで代用してもいいかもですね。家で仕事してるだけでべつに外出もしないのに、モチベーションをあげるためだけにやりました。原稿は進みました。

 

 そして、年が明けて『きみは赤ちゃん』はただいま9刷、『すべて真夜中の恋人たち』は6刷、ありがとうございます。『きみは赤ちゃん』は図書館でも予約してくださるかたが多く、数ヶ月〜1年近く待ちとかのところもあるのだそうで、まわってくるころには生まれた赤ちゃんも一歳になっちゃうね!でも、あっというまだよ。うれしく思っています。ありがとう。色々、告知しなきゃいけないこともたまってきているので、またちかぢかまとめてアップしまーす。

 

 

2015.02.27

たけロス、美登利の変化は何によるもの?

先日、わたしが手がけさせてもらった、樋口一葉「たけくらべ」、現代語訳が収録された日本文学全集の刊行を記念して、「東京大学で、一葉、漱石、鷗外を読む」が開催されました。お越しくださいましたみなさま、本当にありがとういました。

 とても寒かったのに、おかげさまで超満員、たくさんの立ち見が出るほどの盛況で、とてもうれしかったです。ありがとうございました。東大のあの教室、形も奥行きも広さもとても好きです。いいですよね。

  や、最近はあんまり緊張しなくなっていたのに、今回はものすごーく緊張しました。自分の作品じゃなくて、人の書いた作品を扱うからか、最初からどきどき、終わってもどきどき、という感じでした。夏の終わりからつづいていた「たけくらべ」の自分的には総決算、みたいな感じもあったからかしら、いちおうぜんぶ終わってしまって、なんだか気が抜けちゃって、たけロスの日々を送っております。

 

  当日は、「たけくらべ」の原文からすてきなところを抜粋してコピーしたものをみなさまにお配りして、おなじ箇所の現代語訳をわたしが読む、というかたちの朗読をしました。

 目では原文を楽しみ、耳から意味がするすると入ってきて、目と耳の両方で「たけくらべ」を味わう、というあんばいですね。

 朗読って、難しくって、わたしはあんまりしないのですが、今回は、みなさんにとても楽しんでもらえたみたいで、ほっとしています。よかった……。「おなじの、今度またやってください」というようなお誘いもさっそくあったりして、どこかでまた、こんなふうに「たけくらべ」の世界にふれることができたらいいな、と思っています。そして今回は、「たけくらべ」を未読の人もいらっしゃるよねということで、物語のすじを追いながらの朗読&講演、という感じだったのだけれど、いつか、「たけくらべ」の読書会みたいなのもしてみたい。このあいだは時間がなくてできなかった、細かいところまでを心ゆくまで話して念入りに入り込むような時間があればいいのにな……と夢想しています。読書会みたいな感じでやるには少人数でやらないといけなかったりもするし、まあ実現はなかなか難しいだろうけれど……。

 

 そして、池澤夏樹さん、紅野謙介さん、ポーランドの樋口一葉の研究者であるカーシャさん、そして司会進行をしてくださった沼野充義さんとのシンポジウム。それぞれの作品が生まれた背景とその関連、そこから私小説の成立と受容、そしてフィクション論……などなどみるみるうちに話は広がって、あっというまに時間がたってぜんぜん足りなかったですね。またこんな機会があるといいのになあ。

 

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そうだ、当日もちょっと話したけれど、美登利の変化については、「水揚げ説」はないと思っています。「検査場説」もちょっと無理があるなあ。だったら「初潮説」なのかといわれれば、必ずしもそうではないと思います。つまり、どれでもないんじゃないか思っています。

 水揚げ説の根拠のひとつに「花魁の妹で、ああいう界隈で育った女の子が初潮くらいで動じるかいな」というのがあるけれど、や、もちろんどんな環境であれ、初潮は驚くにも変化するにも充分な出来事だと思うけれど、少女の変化には何かしら身体的なきっかけが必須である、という思い込みはどうかしら。

 だいたい吉原の次のナンバーワンになることが約束されたような器量良し、しかも大籬である大黒屋を背負って立つことを期待されてる美登利の水揚げであれば、もっときちんと大々的に行われるはずだし、第一、明治の新しい公娼制度はもちろん、新吉原のルールの年齢にも達していません。まあ、ある種の伝統ってことで元吉原時代の裏ルールが適用された、ってことも完全にないとは言い切れないけれど、とにかく美登利の、いわゆるデビューとあらば相当な話題になることは必至で、しかし町も人々もそういう雰囲気ではありません。そして何よりもやっぱり、水揚げされたとするなら美登利にたいする母親の態度が不自然すぎると思います。さすがに水揚げされた娘の友だちに「いまにいつもの美登利に戻ります」とは言わないでしょう。「いまは中休みってところです」もおかしいです。

 じゃあ美登利の変化は何によるものかといえば、やっぱり、これからのことを言葉ではっきりと説明されたんだと思います。そこにもちろん初潮があってもよいのだけれど、そこに加えて、今後はいついつにこういうことをして、こうなって、あなたはこれこれこういう感じになっていくんですよ、と説明されたのじゃないかしら。何となくわかっていたかもしれないけれど、これまではやっぱり自分の外にあった「遊女の仕事」というものが美登利のなかでリアルに認識されたのではないかと思います。世の中にセックスというものが存在していると知ったときの驚愕だけでもすごいのに、どうじにそれを、まだ体験したこともないそれを仕事にして、これからさきの人生を生きてゆかねばならない、ほかの選択はないのだと知らされたら。美登利の変化は、こうしたことをはっきりと認識させられたことにあったじゃないかと思っています。

 

 

2015.01.30

冬の思い出

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2015.01.17

まえのひ

 阪神淡路大震災が起きたとき、わたしは高校三年生で大阪に住んでいた。あおむけに眠っていて、布団に面した腰のあたりにごぼごぼっと何かが沸きあがってくるような感覚があってそれで目が覚めて、そのごぼごぼっというのがしばらくして揺れに変わった。まるで誰かが中身を確かめるみたいにがちゃがちゃとふってみせる箱のなかにでもいるようなそれはすごい揺れで、仏壇とかタンスとかが前後左右に動きだしているのを見ていても、どこかぼんやりしていて、そして頭ではいま地震がきてるってことは理解しているんだけれども、でも「関西には地震はこない」と子どものころからずっときかされていたせいなのか、すごく揺れてるけどきっとたいしたことにはならない、とどこかで思っていたのだった。

 

 しばらくすると揺れはおさまり、初めてのことで恐怖というよりは興奮しているような状態で、テレビをつけてみるとコンビニの防犯カメラの映像がくりかえし再生されていた。棚のものがあらかた床に落ち、ガラスの扉が割れていたけれど、そのときはまだそれだけだった。経験したことないくらいすごい地震だったけれど(わたしがいたところは震度5強だった)、家の中も家族も無事だったし、水も出るし停電もなかったし、やっぱりあれぐらい済んだんだなと思って、すこし眠った。

 

 それから学校が休みになるという連絡がきて、あらためてテレビでニュースを見てみると、高速道路がめくれるように倒れていた。街が潰れて、燃えていた。どこから何を見ていいのかわからなかった。時間がたって被害が明らかになるその様子、救助の難しさ、行き場のなくなった人々の声、日に日に死者の数がふえてゆく知らせをテレビで見たり、それから知り合いが亡くなったことを知ったりと、震災はとりかえしのつかないまま日々大きくなっていったのに、こうして文章を書いているいまも、当時、自分が何を考えていたのか、なぜかうまく思いだすことができない。

 

 そのときに言語化しなかったということ、そしてもちろん直接的な被害がなかったというのがいちばんの理由なのだと思うけれど、「起きるはずのないことが起きてしまったのだ」ということじたいが、当時に自分にとってはあまりに大きすぎて、恐ろしかったのだと思う。子どものころから「いつか死ぬ、みんな死ぬ」というようなことをずっと思ってはぐずぐずしているようなところがあったけれど、その「いつか」が、そしてやっぱりまだどこか遠くになるはずのものが、とうとうあの日、巨大な斧みたいに振り下ろされたのだ、まえぶれもなにもなく、それはやってきたのだ、そしてその斧はわたしのいた場所ではなく、少しだけ離れたところに振り下ろされたのだ。しかしなぜ?

 

 もちろん理由なんてないのだと思う。でも、それをどう理解してよいのかわからないまま十代を終え、二十代になり、そのわからなさはどんどん小さくなってはいるけれど、20年がたって38歳になったいまもやっぱりなくなってはいないみたいだ。そして長い時間がたったあの3月11日に、わたしは阪神大震災時の大阪とおなじ震度に揺れ、またおなじように震源地からは離れた東京にいて、15年以上時間をかけて、どこかまた振りだしにもどったような気持ちになった。

 

 阪神淡路大震災の揺れのなかで感じた恐ろしさは「起きるはずのないことが起きてしまった」だった。

 そして、東日本大震災の揺れのなかで感じた恐ろしさは「とうとう、このときがやってきてしまった」だった。

 

 ただ運よく直接の被害に遭わなかったわたしは、このふたつについて考える。それも、気が向いたときに。勝手に、心細くなったときに、あたたかな部屋のなかで、お手軽に、都合よく、考える。ちがいについて考えているのか、それぞれについて考えているのかはまだよくわからない。近い将来に必ずやってくるつぎの災害のときに自分がどこにいてどうなっているのかはわからないけれど、そのときのことを、やはりおなじように想像する。日本にかかわらず世界じゅうで毎月のように不幸な災害や事故が起きて、紛争や戦争に巻き込まれている人々がいるのに、いなくならないのに、このふたつの出来事が、自分にとってほかの出来事とはどうしてもちがうものとして残ってしまっている理由について考える。

 

 距離の問題なのだろうか。場所の問題なのだろうか。年齢なのだろうか。じっさいに身体が揺れ、知人が亡くなったからなのだろうか。知っている土地だったからなのだろうか。原発事故という未曾有の事態が引き起こされたからなのだろうか。

 

 起きてしまった災害、起きてしまった大変な出来事について考えるって、そもそもどういうことなのだろうか。支援をつづけること。思いだすこと。忘れないでいること。そこから教訓を導きだして備えること。書いたり、描いたり、話したり、その人のやりかたで何かを問いつづけること。実践すること。癒すこと。社会的に、政治的に、新たなシステムをつくりだすこと。

 

 どれもがそうだともいえるし、そのぜんぶを足したって(そんなこと自分にできるわけもないけれど)不足しているような気持ちになる。そう思ってしまうのにはいくつもの理由があると思うけれど、きっと、何をしたってどうしたって死んでしまった人はかえってこないし、失われたものはもどってこないからだと思う。何も起きなかったことには、もうできないからだと思う。何も起きなかったときにはもう、もどることができないからだと思う。この、本当の意味での、とりかえしのつかなさこそが、本当に本当に大きな問題だからだと思う。あまりにも大きなことだからだと思う。言葉にしても、しなくても。災害や大きな出来事や事件が起きなくても。日常にはそんな一回性に満ちているのだと思う。それでも、何かをつづけてゆくしかないのだけれど。

 

 今日の文章も、何か伝えたいこととか結論したことがあったから書いたわけじゃなくて、ただ、まだわからないままのことをわからないままに、今日、なにを思ったかを漠然と記しておきたいと思いました。

 

 ハロー、もしもし、聞こえますか。阪神淡路大震災から20年たった今日の大阪は、寒いけれど青空の広がる気持ちの良い一日で、雲もきれいで、公園では子どもたちが走り回っていました。犬が散歩していて、スーパーには食品がならんで、地面はかわいていました。わたしはピンクのセーターを着て、グレーのスカートを履いて、靴下ははいていませんでした。原稿を書いて送信して、さっきは息子と一緒にカレーを食べました。穏やかな日でした。穏やかな日でした。そちらはどうですか。今日は、2015年の1月17日は、何でもないのどかな一日だったけれども、今日という日はいつでも、やはり1月16日で、どうじに3月10日なのだと思います。わたしたちは明日なにが起きるのかを永遠に知りません。こんにちは、さようなら、今日はいつだって、すべての、まえのひ、なのだと思います。

2014.12.22

スパゲッティ再訪

 

年末進行が縦横無尽に走りまくるこの師走の忙しい時期に書くことでもないかもしれないけれども、や、忙しいからこそのいま! 書かねばならないのかもしれず、というか、ここ最近このことを書きたくて書きたくてじつはうずうずしてたのよ。いったい何のことかというと、そう、それはスパゲッティのゆでかた&食べ方についてなのです。

 

もしかしたらこんなのはとっくに常識なのかもしれないけれど、わたしにとってはすこぶる画期的&目から鱗だったのです。わたしは1年365日のうちのじつに340日の昼食にスパゲティを作って食べる生活をしているのだけれども、このあいだ、ある発見をしたのやった。まあ時間もないし、ちゃっちゃと言ってしまうと、それは「スパゲティを半分に折ってからゆでると全方位的に最高」という、すごく単純なことなのやった。

 

スパゲティを半分に折ると素晴らしいのは、何よりもゆでるとき。

 

スパゲッティをゆでるときのあれこれは、少量の水でゆでる方法とか、レンジを使ったり容器を変えたりなんだりと、これまでもいくつかあった。けれども麺を半分に折るというのはもっと単純で、そう、小さな手鍋の本当に少しの水を沸騰させるだけで事足りるのである。

 

スパゲティが長いままだと上の部分がくにゃりんとなって滑り落ちるまで時間がかかるし、水はまあ少量でよくても、 お鍋じたいはある程度の高さがないとだめだった。しかし麺をあらかじめ半分に折っておくことによって直径20センチ足らずの手鍋で難なく茹でることができるようになる。これはこうして読んでみるよりもじっさいにやってみるとそのミニマムな感じの良さがよくわかる。グッバイ寸胴鍋!

 

水を沸騰させる時間が圧倒的に短縮できて最高なんだけれど、さらにすてきなのは食べるとき。折ったことによって麺が短くなると「フォークでくるくると巻きにくくなるんでは」「よって食べにくくなるのではないか」と思われるかもしれないけれど、そんなことはまったくなく、むしろ逆。まじで逆。まったく問題なくフォークにちゃんと巻くことができて、どころか、いつもは巻くのに2回転から3回転を要していたのが1回転ですみ、一度の食事の時間もわずかながら短縮できることになり、塵も積もれば理論でいくと、相当な時間を確保することになって、これも最高というわけなのだった。

 

そんなんとっくに知ってるわ、でしたらすみません……でも、わたしにとってはものすごい大発見だったのです。スパゲッティ好きのみなさまにスパゲティのべつの一面を伝えたくて、つい書いてしまいました。やったことない人はぜひやってみてね。

 

クリスマスもお正月もとくになく、今年もまたずるずると仕事をすることになりそうです。なぜならなぜなら……年末進行だっていうんでひいひい言いながら入稿ばっかりしてるのに、かと思うといくつかのゲラの返却が、なぜかどういうわけか、明けてすぐの1月6日とかに設定されているのだから、そうなるよね。「いえ、お正月は休みます」とはっきり言えない気の弱いわたしなのだった。

そして『きみは赤ちゃん』、おかげさまで8刷に! みなさん楽しく読んでくださってるみたいで、とてもとてもうれしいです。そして『すべて真夜中の恋人たち』もあっというまに5刷に……! 物語はちょうど12月、冬の、このあたり。しんしんと何かが残りますように、胸に、真夜中に。

2014.10.24

「フランスで読まれる川上未映子」満員で御礼、そして

 

 日仏会館で開催される、わたしの友人であり翻訳者であるパトリック・オノレさん、そして詩人であり作家である関口涼子さんお招きし、
 『すべて真夜中の恋人たち』の文庫化を記念しまして開催される、
 フランスで読まれる川上未映子なのですが、
 定員に達してしまったので申し込みを終了させていただきました。

  
 
 本来ならば120名ほどの会場なのですが、今回は椅子をたくさん追加して、なんとか200名前後の方々に聞いていただけるようにしてくださったのですが、しかしこちらもいっぱいに……。
 まだ先だし、これから予約するかー! と思われていたみなさまにおかれましてはごめんなさい、
 そしてお申し込みくださったみなさま、ありがとうございます。色んな話ができるのをすごく楽しみにしています。

 

 そして、少しまえにちょっとだけお知らせしました、『きみは赤ちゃん』にかんするトークイベント(お子様&赤ちゃんも大歓迎)は、申し込み方法など詳細は追ってお知らせしますが。日程は11月29日、お昼ま、ということに決まりましたので、この日はぜひに空けておいてくださいませ!

 

○現在発売中の『週刊現代』に『きみは赤ちゃん』にかんしましての、インタビューが掲載されております!
 この著者インタビューのページ、これまで三度登場しているのですが、恒例のQ&Aもございます。ぜひお読みくださいませ!

 
 

 で、今週のはじめに、『すべて真夜中の恋人たち』のサイン本を作りに行ってきました。

 

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 画数が少ないということもあるのですが、わたしはサインをするのがものすごーく早く、それはもうまわりが「もうちょっとゆっくりやれよ……」と思かもしれないくらいに早く、100冊とか15分くらいで終わってしまうのだった。
 これより早かったのは、故、渡辺淳一さんでいらっしゃったらしく、こう、テーブルいっぱいに本のサインをするページを開いて、書くというよりはもう塗っていくというあんばいで筆を一気に走らせるというそんな鮮やかな技をお持ちだったそうです。けっきょくわたしは、この日ぜんぶで500冊くらいにサインをさせていただいて、そして色紙なども作成しました。

 

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 みなさんに読んでもらえよ、遠くに行っても、がんばれよ……という気持ちを込めて、サイン書き書き。

 

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 そして都内の書店を数件伺って、パネルにこれまたサインをさせていただいたり、ポップにメッセージを寄せたりなど。
 そうそう書店の何が好きって、著者の直筆メッセージ、みたいなのももちろんいいけど、やっぱ書店員さんの、ほんとにこの本が好きなんだなーというのが伝わるポップを見る喜びに尽きるところもありますよね。ペンの色変えたり、縁取ったり、その本のよさを伝えようとあれこれ工夫して展開されていたりして。
 書店にいけば、時間のゆるす限り、ポップをあるだけぜんぶ見ちゃうな。
 本にたいする愛情があのようにかたちになっているのを見ると、「ああ、本というものを好きな人がここにいるんだな……」と、ふだんずうっと家で原稿を書いてるだけだと「うう、この小説をいったい誰が面白いと思うだろう、果たして誰が求めてくれるだろう……」とうっかり淋しく、そして心細くなる感覚を明るく呼び戻されて、あらためて今日もがんばろうとこれまたほんとに思うのだった。

 

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 そして、こんなポスターも作成していただきました。思わず壁に落書きしてしまいたくなる余白も素敵で、すべまよ感、ありますよね。撮影は石倉和夫さん、デザインは講談社チームです。
 単行本のときのポスターもモノクロでしたが、また雰囲気が違って装いもあらたに、という感じでございます。書店でみかけたらよろしくお願いいたします、というか、ポスターによろしくも何もないのだけれど……。

 

 『すべて真夜中の恋人たち』は、
 夢見ることもなく、自分に自信もなく、
 人生で愛に出会うことなど想像もしていなかった人の、恋物語です。
 これからどんどん寒くなる、冬の夜に、真夜中に。
 みなさんがどうかこの物語と出会ってくださいますように。

 

 

2014.10.15

秋ね、「すべて真夜中の恋人たち」文庫になっちゃって

 お知らせではない日記そう日記をこそわたしは書くためにブログをリニューアルしたのに、今日も今日とてお知らせがいくつかあって、なぜいつまでもこんなことになっているのだろうと思うけれど、大人が日々を生きるということは日々これ怠らず連綿と仕事をする、し続けるということでもあり、そしてお知らせは連綿のその結果、なのだから、これはこれで道理で道理、なのかもしれないのだった、ね。
 
 
 とまれ、本日、『すべて真夜中の恋人たち』の文庫本が発売されました。わーい。
 さっそく各書店でも、色々と展開くださっているみたいで、感激しております。
 あれから3年とは早いものだけれどどうぞよろしくお願いします。
 装丁は、単行本のときからひきつづき、名久井直子さんです。
 帯文には、当時、テレビ番組で爆笑問題の太田光さんが拙著についてコメントしてくださったものを、お借りしました、ぜひお手にとってくださいませ……。

 そして、今回の文庫化、この初夏にフランスで刊行されたことをあわせて記念いたしまして、
 11月19日はこちら、「フランスで読まれる川上未映子」も開催いたします。
 この機会にどうぞご参加くださいませな。
 お申し込みは、こちらから!
 
 
 『IN POCKET』10月号 にて『すべて真夜中の恋人たち』の特集が組まれておりまして、先日ご紹介しました、フランスのル・モンド紙に掲載された、インタビュー&書評の和訳が掲載されております。この機会にぜひー。
 
 
 『文藝春秋』11月号 にて、漫画家の伊藤理佐先生と対談しております。
 理佐先生の夫君はおなじく漫画家の吉田戦車さんでありまして、よく似た家庭環境つながり、そしておふたりとも育児漫画を多数刊行されていることもあり、生活や仕事のあれこれたくさんお話しました。理佐先生は、優しくて色白でとても楽しくて、あっという間の時間でした。タイトルは「子育て妻が不機嫌になるとき」です、どうぞお読みくださいませ!
 
 
 そして『きみは赤ちゃん』、みなさまにご好評いただいておりまして(ただいま7刷!)で、うれしいな。取材もまだまだ続いておりますので、またお知らせいたします。
 そして、11月末ごろには「きみは赤ちゃん」関連で、イベントを開催する予定でおります。
 詳細は追ってお知らせいたしますが、
 赤ちゃん&お子様と無料で参加いただける、もちろんお昼間の時間帯で、なにか楽しいことを考えておりますので、続報をお待ちくださいませ!たのしみしてまーす。

2014.09.12

あらゆるところにスケキヨが

 暑いのか涼しいのかわからないけれど、日差しが強いような気はするので「おまえもこれが塗られ納めよの……」と言いながら腕と首に日焼け止めを塗りました。ああ、空気には、晴れと夏の去り際と一度きりの匂いがたちこめて、胸は、何も目指しようもない運動を飽きもせず鳴らしている最中、誰かに耳を近づけてみれば聴こえるかもしれないし、聴こえないかもしれないから、誰かと耳のことは少し忘れてベランダにひとりきりで立ってみる、今年もまたこうして夏が終わってゆくをわたしたち、いつもの場所からまじ見てる。

 

 それで、『きみは赤ちゃん』にかんするロングインタビューがこちらでお読みいただけます!
「cakes〜若き文学者の肖像」
 ロングインタビューっつうぐらいのもので、かなりのヴォリュームになっておりまして、執筆についてのあれこれや、それでけっきょくどうやって生きてゆくのがいいのかなどなど、数週にわたって掲載される予定です。無料登録していただくとすべてをお読みいただけますので、10秒で完了しますゆえ、どうぞよろしくお願いしまーす。

 

 そして、9月17日はhontoで、
特設サイトが開設される予定でーす。
 こちらはインタビューなどに加え、わたしの「状況別おすすめ本のコーナー」などもあって……たとえば。

 「赤ちゃんがどうしても眠ってくれず、目の回りにムール貝をくっつけたような顔になってるけどそんなときだからこそ白目になりながらもなんとかして読んで眠ったつもりになりたい本!」

 ってな感じで、ほかいくつものシチュエーションを設定して、それぞれ3〜5冊を推薦文とともに、おすすめしております。ほいでもって、書店の店頭や色々なところでお手に取っていただけるフリーペーパー版の 「honto+」 にも現在、インタビューが掲載されております。
 そして今後は、

web版 「honto」 
フリーペーパー版 「honto+」 

 の両方で、状況別おすすめ本の連載、

「こんなときには、これを読むのよ!」

 が始まる予定です(今回は出産&育児がメインの選書だったけど、連載は、色んなシチュエーションよ……)。

 

 ほかにも五月雨式になってしまけどインタビューなど掲載されております。
 『ひよこクラブ』『女性セブン』、そして『FRaU』10月号 には、連載エッセイ以外に、「5分で、キレイ」特集に、インタビュー&ポートレイトで登場しております(ちなみに今週の週刊新潮は、にっくき口内炎をなくすためのレーザー治療について書いています!)。
 
 そして『きみは赤ちゃん』の書評も、こちらからお読みいただけます。
 吉田戦車さんによる、週刊文春の書評
 野崎歓さんによる、東京新聞の書評
 
 あと、共同通信や、女性誌でもたくさんご紹介されているみたいなのですが、
なかなか全部を追いきれず、ご紹介できたりできなかったりがはがゆいのだけれども、でも、ぜんぶ本当にうれしく思っております。ありがとうございます!
今後も、「AERA」「AERA BABY」、そして「BAILA」「CODOMOE」「文藝春秋」……などなど、対談や取材が続いておりますので、そのつどまたお知らせいたします。っていうか、出たときにぱっとお知らせできるのって、やっぱ twitter なのよね……。
  
 ところで2歳3ヶ月の最近のオニは、「悪魔の子なんじゃないだろうか……」と、頭のどこかに666が刻まれてないか探そうかと思うほど絶叫し、世界のすべてにたいして「否!」をぶつけまくっていた頃に比べるとまだ少しはましだけれど、しかし、バナナもぽーい、カレーも白飯ごとぽーい(このときの絶望感ゆうたら……)、しかもそのあと自分のぽーいに悔しくてまた激しく号泣と、まあ、相変わらずの魔の2歳児、そんなような日々なのだった。
 で、「鬼から電話」も「エイリアンから電話」もまったく効果がなくなった今現在……我が家の頼みの恐怖先生は「スケキヨ」なんだよね……。いつだったかの夜、顔に保湿パックを貼付けたわたしを見て心の底から「!!」となり、もじどおり震えあがって自ら布団に「ぎゅん!」っと飛び込んでいったのを見て、「これは使えるでな、うしし……」となったんである。
 

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 この画像をiPhoneに保存し、いつでもさっと取り出して印籠っぽく使うのである。それからオニの世界にはあらゆるところにスケキヨが存在することになったのだけど、われわれも、もう「スケキヨ」といえばどうにかなると思ってるから、いつなんどきでもスケキヨが適用されることになり、そうするともうスケキヨのスケキヨ性が完全に変化してもはやキャラでも何でもなくなり、たとえば外食してるときに床に落としたものを拾って食べようするオニに「あっ、もうそれ、落ちてスケキヨになったから無理」とか、炎天下やのになかなか帽子をかぶろうとしないオニに「もー、何回もおなじことゆわさんと、ほれ、はよスケキヨかぶって!」とか、スケキヨはじつに高い汎用性を獲得するにいたって、朝から夜までたいへんお世話になっているのやった……しかしときどき、ぬいぐるみやわたしをぱちんと叩いたオニに「あっ、やめて……スケキヨが痛がってる……」とか、むしろそれオニ的には好都合なんじゃないのというような具合に使い方を間違ったりもして。でも、いまのところスケキヨがいちばん効いてます……お困りのお母さまも、スケキヨいかが……。

2014.09.04

Elme 美容院、おかっぱは、こんな感じでひとつ

刊行したりすればサイン会で、そして講演をすれば質疑応答などで、いらした皆さんに、よく聞かれていたのである。
もちろん小説のあれこれや創作のいろいろ、が、その大半なのだけれど、それでも何を聞かれていたかというと、それは「おかっぱ」についてなのやった。

 

「ミエコさんのようなおかっぱいにしたいのだけれど、どうも節子になる」
「ウォーズマンのようになる」
「鳩山夫人」
「ついてはすみやかに、コツなり美容院なりを教えるように」

 

みたいなことをおっしゃる方が多いのだった。そのたびに、

 

「そ、そうですか……じゃあ、ブログで書きますのでよろしくねん」

 

と返事しつづけていたのだけれど、これまで一度も書いてこなかったあかんわたしなのである。
なので今日は、わたしがいつもお世話になってる美容院「Elme」をご紹介したいなと思います。

息子の髪の毛をおかっぱにはしているけれど、でもそんなん適当すぎるほどに適当にやってるだけなので、
カットというのがどれくらい難しいのか、その本当のところはわからないけれど、でもいつも自分の頭をカットしてくれている武田くんを見ていると、

「ああ、美容師って大変やのう……」としみじみしてくるんである。

というのも、わたしの髪の毛といえば、
硬くて多くてうねり調子の癖っ毛で、湿気を感知したらその瞬間からとめどもなくふえるわかめのように膨らんでゆくようなあんばいで、ふつうにおかっぱに切っただけでは、たわしとモップの中間の何かよくわからん固まりみたいになってしまうんである。
しかし武田くんは、2008年からこんな処置なしのわたしの髪の毛を優しく見つめケアしてくださり早6年。
カラーリングとかストレートパーマとか、その時々に必要なものを見極め、わたしのころころと変わる気分にも力強く対応してくださり、そして何よりもカットの技術の限りを尽くして(「世界の終わりとハードボイルドワンダラーンド」的な……!ぐふぐふ)、人前に出ても恥ずかしくなく、どころか、「その髪型にしたいのだけれどどうすればよいのか」というような感想までをちょうだいするフォルムを維持してくれている、わたしのスーパー・ヘア・スタイリストであるのやった。

 

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おかっぱにも長さ、色、さまざまあるけれど、最近ではこれ!

前田こづえさん撮影によるこの写真のおかっぱも、もちろん武田くんによるものです。

本来は困難&やさぐれ髪でしかないわたしの頭に、なぜか艶のリングが……泣けてくる。

おまけに「しいたけのかさですか」、「いっそ書籍ですか」というような激烈強烈なぜっぺきのわたしを、最善を尽くしてまるく形づくってくれるおかげでどれだけ気持ちが助けられていることか……。

わたしの髪質でここまでつるりんと仕上げてくれるのだから、普通の髪質のかたならばいったいどうなってしまうのやろう……! これまでわたしのおかっぱに興味を示してくださったかた、そして質問してくださったみなさま、わけもなくおかっぱにしたい記念にかられているかた、武田くんに「ミエコのおかっぱ」みたいなあんばいで伝えてもらえればしゃしゃっと楽々一発だと思いまーす。ああ、これで約束を果たせたような気がしてちょっとほっとしてます。遅くなってごめんやった。

 

そして、現在二児のお父さんでもある武田くんのエルメ は、なんとうれしいことに、小さなお子さん、赤ちゃんがいらっしゃるお母さんも、あれこれ心配することなく髪の毛を色々してもらえるようにと、「ママズデイ」なるものを設けており、その日なら、お子様連れでも何の問題もなく、美容に集中することができるとそういう素晴らしいあんばいであるのだった。

 

そう。保育園に預けてらっしゃるお母さんならまだしも、預けてらっしゃないお母さんが美容室に行くのは至難の業……。でもエルメなら一緒に来て、お子さんが遊ぶのを見守りながらちょきちょきやってもらえます。これはぜったいに紹介せなあかんやろ……と鼻息荒くして、みなさんが少しでも心地よく快適に、髪の毛のまつわる素敵なひとときを過ごしてほしいなーと思っております。
詳しくは美容室エルメにお問い合わせくださいませなー。

 

ところで……

アマゾンでは品切れになって一ヶ月以上が余裕でたとうとしている、いったいなぜ…というため息ももはや去り、なんか色んな意味で信じられない感じになってる『きみは赤ちゃん』なんやけど、最近ではもう慣れたというかどうしようもないというか諦めの境地っていうかで、

 

「一時的に在庫切れ、入荷時期は未定です」が、

「永久的に在庫切れ、入荷時期は未定です」に空目する感じにもなってきたわ。

 

とはいえ、おかげさまでただいま5刷で、リアル書店はもちろんのこと、ほかのネット書店にも在庫はあるようなので、どうかそちらで入手いただけましたらすごくうれしいです。とはいえアマゾンもわりにすぐに届くとは思うのだけれども……しかし今回の本はなかなか外出できない人にまずはって気持ちがあるので、慣れたってゆってもやっぱりちょっとじりじりするう、回復なむなむ回復頼む。

2014.08.23

CREA Webでのお悩み相談、わたしも悩んで

 なんかちょっと涼しかったような気がした今日ですけれども、みなさんお元気でいらっしゃいますか。小学生のときにちょっと描いてみた少女漫画のタイトルが「残暑お見舞い申し上げます」っていうタイトルだったことを、なぜか突然いま30年ぶりくらいに思いだしたけれどそしてすぐに忘れるんだろうと思います。
 
 そうです! CREA Webで募集しておりました、出産&妊娠&育児その他もろもろにまつわるお悩み相談、たくさんのご応募をありがとうございました!
 
 どれも切羽詰まりかつ、やっぱり女ともだちに「なあなあ」みたいな感じで話しかけてくれるようなあんばいでもあり、お寄せくださったなかからこちらも悩みに悩んで二回にわけて、それぞれ3名の方へのお答えを掲載させていただいております。そして採用させていただいたみなさまには署名入りの『きみは赤ちゃん』をお送り差し上げます。みなさん、ほんとにどうもありがとうございました!

 川上未映子のお悩み相談はこちらから! まずは前半の3名の方々!どうぞお読みくださいませ!後半もまたお知らせいたしまーす。ねばねば。
 


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