川上未映子

文学

2015.10.07

『MONKEY』にて、村上春樹さんにインタビューしましたよ

 

すっかり秋の涼しさで、厚めの靴下をはいたときのこの安堵!手首足首、いわゆる首のつくところ、冷やさないように秋の深さを迎えたい、今日このごろなのだった。

 

そして、もうすぐ発売になります柴田元幸責任編集『MONKEY』で、村上春樹さんにインタビューいたしました。わーい!

村上春樹さんの『職業としての小説家』刊行を記念したロングインタビュー。題して『優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない』です。新作にまつわる話はもちろん、村上読者にはおなじみの「壁抜け」についてや、比喩とイマジネーションはどこからやってくるのか、はたまた創作とジェンダーについて、小説家と政治の関係はどうあるべきか、そして、個人的にぜひとも強調しておきたい村上さんの美質について……などなどあれやこれや色んなお話を伺いました。

 

 いやー、仕事上取材されたりインタビューされる機会はあってもインタビューするのって初めてで(そしておそらく今回が最後)、これまた独特の面白さがありますね! 長時間にわたるインタビューだったけれど、でもあっというまでとても楽しいひとときでした。ぜひお手にとってご覧くださいませな。そんな『MONKEY』の特集は『古典復活』。こちらも村上さんが登場されて、柴田先生とともにめくるめく英米文学の素敵&現状&来し方行く末についてたっぷりお話されています。おふたりの復活してほしい本のリスト&なによりおふたりの新訳もすこぶる贅沢、さらにはなんといっても表紙も素敵で、ああもう読みどころしかない『MONKEY』、『古典復活』号でございます。ぜひみなさま、お読みくださいませな。どうぞよろしくお願いします。

 

『みみずくは黄昏に飛びたつ──川上未映子 訊く、村上春樹 語る──』につきましては、こちらの記事をご覧ください。

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そして、「新潮」11月号には新潮新人賞作品が発表&掲載されておりまして、長い議論&選考を経て、受賞作が決定いたしました。『恐竜たちは夏に祈る』高橋有機子さん、おめでとうございます! そして選評を寄せています。こちらもどうぞよろしくお願いします。

 

いまは今月中頃に刊行される小説『あこがれ』の準備やそのほかの仕事でなにがなんだかという毎日ですが、日々は毎日あたりまえの顔をしてつづいているのでいつになってもやることばかり、でも誰だってきっとそうだよね。今月はサイン会も予定しておりまして、名久井直子さんによる装丁も素敵で、『あこがれ』にまつわるお知らせは追って。スペインの写真&記録も追って。山梨文学館での楽しかったあれこれも追って。けれども追って追ってとしているうちに月末のシンガポール出張に気がつけば行って帰っておなじようにパソコンに向かっているような気がしていて、こうなるとあいかわらず人間っていつを生きてることになるのかしらんまったくもって不思議ですわね、あらあらかしこ!

 

2015.10.02

『ただようまなびや 文学の学校 2015』に講師として参加しまーす

 

2015年 11月28日、29日に福島県で開催される、

『ただようまなびや 文学の学校 2015』に、

講師として参加することになりました!ワークショップというかたちで、みなさんと一緒にあれこれ考えて、そして実践できればと思います。

 

古川日出男校長をはじめ、柴田元幸さん、開沼博さん、華雪さん、豊崎由美さん、レアード・ハントさん、ゲストに三浦直之さん、などなど豪華な講師陣!そんな『ただようまなびや』については、まずはこちらでチェックをば!とっても見やすい&アクセスしやすい素敵なサイト、こちらで全体を眺めることができます。

 

古川日出男校長の「ただようまなびや宣言 2015」にもありますように、今年のテーマは『肉声、肉筆、そして本』であります。今回のルールは、PC禁止、とありまして、これもまた楽しみですね。本当に形式というものは内容をいやんなるほど規定するのでどうしてくれよう、きっといつもと時間の流れだって違って感じられることでしょう。楽しみ。

 

そしてわたしも、いくつか登壇&ワークショップで講師を務めます。

 

詳しくはこちらで時間割をチェックしてくださいませ。

 

ワークショップひとつめ『ふくらむ言葉、物語』では、短歌から物語を作ろうと考えています。受講者には前もって、「こんなあんばいでひとつ」という感じの、わたしが作成したものと、お題として選んだ短歌を送付します。そしてみなさんに作っていただいたものを中心に、みんなであれこれディスカッションしたいなと思っております。

ふたつめでは、樋口一葉『たけくらべ』をもとに、耳と口、聞くことと発語することにおいて言葉はいったいどうなっているのか。また、翻訳の現場ではいったい何を起こっているのか。それらを体験しながら『たけくらべ』から抜粋したいくつかの文章をじっさいにみんなで現代語訳もしてみたいと思っています。たっぷり数時間、みなさん一緒にやってみましょうな!

 

 

そんな感じで、みなさま、募集開始は10月28日午後17時から開始です!

みなさま、ふるって!

2015.07.07

『GRANTA』webに『彼女と彼女の記憶について』

 

短編小説『彼女と彼女の記憶について』が、英国文芸誌『GRANTA』webに掲載されておりまーす。『GRANTA』の今号のテーマは「所有」。翻訳は、由尾瞳さんです。

オリジナルは柴田元幸さん責任編集『MONKEY』vol 2 に掲載されていますので、ぜひお読みくださいませ。

 

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そして、少しまえにアメリカで刊行された『MONKEY BUSINESS』に、短編『十三月怪談』が掲載されています。こちらは短編集『愛の夢とか』に収録されたものです。こちらも翻訳は由尾瞳さん。うれしいな。書評もこちらでお読みいただけます。ぜひ。

 

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梅雨ですねえ。蒸しますねえ。もう七月なんだねえ。こぼれているもの、やってくるもの含めてまたまたお知らせしたいと思います。追って追って。そして『きみは赤ちゃん』が、11刷に……。発売からまる1年、版を重ねております。読んでほしいなあと思っている方々に届いている実感がとてもあって、しみじみと嬉しいです。読んでくださって、本当にありがとう。

 

2015.03.16

今年は谷崎潤一郎YEARだよ、「TANIZAKI MY LOVE」に参加しまーす!

今年は谷崎潤一郎、没後50年にして生誕130年。

4月4日からは神奈川近代文学館で谷崎潤一郎展が開催、

5月10日からは「谷崎潤一郎全集 決定版 全26巻」が刊行される予定で、

そのほかにもたくさんの関連書籍が刊行されます!

 

ということで、4月8日に「TANIZAKI MY LOVE 谷崎潤一郎メモリアル2015」に参加します。

谷崎や創作のいったいどんな話になるのかわたしも楽しみですけれど、事前に取り上げるならどの作品? との質問に全員が「春琴抄」と答えたらしいので、そのあたりからの感じになりそうです。

朗読や演奏もあるみたいです!ぜひお越しくださいませ!

 

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TANIZAKI MY LOVE 谷崎潤一郎メモリアル2015
出演:阿部和重、奥泉光、川上未映子、夢眠ねむ(でんぱ組.inc)
日時:2015年4月8日(水) 開演19:00(開場18:30)
場所:よみうり大手町ホール
チケット:全席指定(税込2,000円)
※未就学児入場不可

⇒サンライズプロモーション東京
電話番号:0570-00-3337
⇒ローソンチケット(Lコード:37852)
電話番号:0570-084-003
⇒チケットぴあ
電話番号:0570-02-9999(Pコード:628-708)
⇒e+(イープラス)
⇒よみチケ

2015.02.27

たけロス、美登利の変化は何によるもの?

先日、わたしが手がけさせてもらった、樋口一葉「たけくらべ」、現代語訳が収録された日本文学全集の刊行を記念して、「東京大学で、一葉、漱石、鷗外を読む」が開催されました。お越しくださいましたみなさま、本当にありがとういました。

 とても寒かったのに、おかげさまで超満員、たくさんの立ち見が出るほどの盛況で、とてもうれしかったです。ありがとうございました。東大のあの教室、形も奥行きも広さもとても好きです。いいですよね。

  や、最近はあんまり緊張しなくなっていたのに、今回はものすごーく緊張しました。自分の作品じゃなくて、人の書いた作品を扱うからか、最初からどきどき、終わってもどきどき、という感じでした。夏の終わりからつづいていた「たけくらべ」の自分的には総決算、みたいな感じもあったからかしら、いちおうぜんぶ終わってしまって、なんだか気が抜けちゃって、たけロスの日々を送っております。

 

  当日は、「たけくらべ」の原文からすてきなところを抜粋してコピーしたものをみなさまにお配りして、おなじ箇所の現代語訳をわたしが読む、というかたちの朗読をしました。

 目では原文を楽しみ、耳から意味がするすると入ってきて、目と耳の両方で「たけくらべ」を味わう、というあんばいですね。

 朗読って、難しくって、わたしはあんまりしないのですが、今回は、みなさんにとても楽しんでもらえたみたいで、ほっとしています。よかった……。「おなじの、今度またやってください」というようなお誘いもさっそくあったりして、どこかでまた、こんなふうに「たけくらべ」の世界にふれることができたらいいな、と思っています。そして今回は、「たけくらべ」を未読の人もいらっしゃるよねということで、物語のすじを追いながらの朗読&講演、という感じだったのだけれど、いつか、「たけくらべ」の読書会みたいなのもしてみたい。このあいだは時間がなくてできなかった、細かいところまでを心ゆくまで話して念入りに入り込むような時間があればいいのにな……と夢想しています。読書会みたいな感じでやるには少人数でやらないといけなかったりもするし、まあ実現はなかなか難しいだろうけれど……。

 

 そして、池澤夏樹さん、紅野謙介さん、ポーランドの樋口一葉の研究者であるカーシャさん、そして司会進行をしてくださった沼野充義さんとのシンポジウム。それぞれの作品が生まれた背景とその関連、そこから私小説の成立と受容、そしてフィクション論……などなどみるみるうちに話は広がって、あっというまに時間がたってぜんぜん足りなかったですね。またこんな機会があるといいのになあ。

 

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そうだ、当日もちょっと話したけれど、美登利の変化については、「水揚げ説」はないと思っています。「検査場説」もちょっと無理があるなあ。だったら「初潮説」なのかといわれれば、必ずしもそうではないと思います。つまり、どれでもないんじゃないか思っています。

 水揚げ説の根拠のひとつに「花魁の妹で、ああいう界隈で育った女の子が初潮くらいで動じるかいな」というのがあるけれど、や、もちろんどんな環境であれ、初潮は驚くにも変化するにも充分な出来事だと思うけれど、少女の変化には何かしら身体的なきっかけが必須である、という思い込みはどうかしら。

 だいたい吉原の次のナンバーワンになることが約束されたような器量良し、しかも大籬である大黒屋を背負って立つことを期待されてる美登利の水揚げであれば、もっときちんと大々的に行われるはずだし、第一、明治の新しい公娼制度はもちろん、新吉原のルールの年齢にも達していません。まあ、ある種の伝統ってことで元吉原時代の裏ルールが適用された、ってことも完全にないとは言い切れないけれど、とにかく美登利の、いわゆるデビューとあらば相当な話題になることは必至で、しかし町も人々もそういう雰囲気ではありません。そして何よりもやっぱり、水揚げされたとするなら美登利にたいする母親の態度が不自然すぎると思います。さすがに水揚げされた娘の友だちに「いまにいつもの美登利に戻ります」とは言わないでしょう。「いまは中休みってところです」もおかしいです。

 じゃあ美登利の変化は何によるものかといえば、やっぱり、これからのことを言葉ではっきりと説明されたんだと思います。そこにもちろん初潮があってもよいのだけれど、そこに加えて、今後はいついつにこういうことをして、こうなって、あなたはこれこれこういう感じになっていくんですよ、と説明されたのじゃないかしら。何となくわかっていたかもしれないけれど、これまではやっぱり自分の外にあった「遊女の仕事」というものが美登利のなかでリアルに認識されたのではないかと思います。世の中にセックスというものが存在していると知ったときの驚愕だけでもすごいのに、どうじにそれを、まだ体験したこともないそれを仕事にして、これからさきの人生を生きてゆかねばならない、ほかの選択はないのだと知らされたら。美登利の変化は、こうしたことをはっきりと認識させられたことにあったじゃないかと思っています。

 

 

2015.02.02

たけくらべにさわる 〜『たけくらべ』現代語訳刊行記念イベントにつきまして

 

 

しかし冬。みなさま、頬、腰、くるぶし、お元気。

 これまで何回かにわたってお知らせしてまいりました、樋口一葉『たけくらべ』の新訳が、2月10日ごろに発売になりまーす。よかっつー!!!(よかったの複数形)

 こちらは河出書房新社から、今後数年間にわたって刊行されます「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」のひとつになります!

 去年の秋に刊行されました池澤夏樹訳『古事記』、 表紙の色も、鴻池朋子さんの絵の帯もうるわしく、書店でも平積みで大好評! そして第二弾は中上健次『鳳仙花』、第三弾が、この『たけくらべ』になります。

 

ほかに収録されますのは、夏目漱石『三四郎』、森鴎外『青年』。明治の東京を舞台に繰り広げられる思春期&青春小説みっつだよ。ただいま予約受付中ですので、ぜひお求めくださいませ!

 そしてこちらが『たけくらべ』の表紙になります。帯の絵は、漫画家の浅生いにお先生の作品でございます。

 ところでこの表紙を見た友人・知人から、「なんで帯にあんたが……」的な突っ込みをたくさんいただいているのですが、すみません。この帯の女性はわたしではなく、ご存じ『三四郎』の美禰子なのです。そう、編集部から「現代版の『美禰子』(何気ない仕草にぐっときてしまう男子目線で描いた、きれいなお姉さん。かといって年上感ではなく、「たけくらべ」の美登利にも通じるような少女感も残したかわいさがある女子)を描いてほしい」という依頼を受けられた浅生いにお先生による、現代版・美禰子なのです。たしかに髪型おんなじですけれど、そう言われてみるともう美禰子にしか見えないこの不思議。美禰子美禰子、わたしの処女作に出てくるのは三年子。ああわたしたち、いつだってストレイシープ。

 

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そして先日もお知らせしました、イベントの詳細が決まりましたわーい。予約も不要で、無料なので、みなさんぜひ、聴きにいらしてくださいな。

 第 1部は、『たけくらべ』について色々なことをわたしが全力&全愛でもって語るという、少々暑苦しい会になるかもしれませんが冬だしいいよね。内容はこれから色々と考えたいと思っていますが、原文と今回わたしが訳した文章を比較したり、具体的なところ&細々したところも多くなるのやもしれません。なので、できますれば、みなさまぜひ今回の現代語訳版をお読みいただいてからのご参加、ということになれば諸々がなお豊か、わたしはめさめさうれしかったりします。 そしてちょっとかわった朗読もやる予定でいます。『たけくらべ』が好きな人も、これまで興味のなかった人も、ふうん、ちょっと読んでみよっかなーと思ってくれたりしたかたも、そうでないかたも! 当日は『たけくらべ』の魅力について精一杯お話したいと思っております。どうぞみなさまよろしくお願いします。そして第2部は、座談をします。こちらもいったいどんな内容&お話ができるのが今からすごく楽しみ。

 

   

「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」

第13巻『樋口一葉 たけくらべ/夏目漱石/森鷗外』刊行記念
東京大学で一葉・漱石・鷗外を読む

2015年2月22日(日)14時開演(13時30分開場)

場所:東京大学本郷キャンパス法文2号館1番大教室
アクセス:丸ノ内線・大江戸線「本郷三丁目」、南北線「東大前」下車、徒歩10分

予約:不要(先着順。会場は約220人収容)。当日12時30分より会場入口で整理券を配布。
満席の場合は、入場をお断りする場合もあります。
入場:無料

第1部 14時〜15時
「たけくらべ」にさわる
川上未映子(作家)

第2部 15時15分〜16時45分
シンポジウム・明治の青春小説の魅力
池澤夏樹(作家)×川上未映子(作家)×紅野謙介(日本大学教授)×沼野充義(東京大学教授)

 

昨年11月から刊行が始まった「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」。その第13巻『樋口一葉 たけくらべ/夏目漱石/森鷗外』が2月に刊行されます。収録作品は、明治を象徴する青春小説「たけくらべ」「三四郎」「青年」の三作。それぞれの作家・作品にゆかりの深い本郷の東京大学で、各作品の魅力と明治の文学について、全集編者の池澤夏樹氏、「たけくらべ」の新訳に取り組んだ川上未映子氏、近代文学が専門の紅野
謙介氏と、東京大学現代文芸論研究室の沼野充義氏が語り合います。

お問い合わせは、東京大学文学部現代文芸論研究室 Tel&fax:03-5841-7955
E-mail:genbun@l.u-tokyo.ac.jp までよろしくです。

 

 

2014.11.13

樋口一葉 & 葛飾応為 IN 2014

 夏の真ん中あたりからずうっと、今もつづいております『きみは赤ちゃん』のプロモーションと平行してやっていたのが、樋口一葉『たけくらべ』の現代語訳

 一文字一文字をおでこに埋め込んでゆくような気合いとあんばいでもって取り組んできたのやったけど、このあいだ、とうとう、とうとう終わってしまって、全力で脱力している日々であります。いくつもある名場面&山場、そして会話、登場人物たちのふるまいのひとつひとつに言葉にあてて置き換えてゆくそのすべてがいつもクライマックスやったけれども、最後の最後、あの一行を終えたときは、もう『わたしのなかの全樋口が泣いた』みたいな感じで、何もかもがたまりませんでした。多くのみなさんにとってもきっとそうであるように、やはりわたしにとって『たけくらべ』がいかにとくべつな作品なのかということを思い知る、ほんとにありがたい時間でした。なむなむ。そして年内はずっと『たけくらべ』のゲラに向き合うことになります。もうちょっとだけしあわせな時間が続きそうでうれしいけれど、でも、何よりも、みなさんにはやく、はやく読んでほしいなと思える仕上がりになりそうで、それも嬉しい予感です。

 いずれにせよ、現代語訳をすることになった経緯とか、訳すにあたっての様々な思案と実践、思い込み、気合い、などなどは、いずれまた刊行のときにたっぷり、ほんとにたっぷりとお話できる機会などがあればいいな! と思っております。できればいいな。

 それで、話が前後ちゃいましたが、

 今回の現代語訳は、河出書房新社から刊行されます「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」のなかのひとつなのです。特設ページはこちら。ラインナップを眺めるだけでうっかりうっとりしてしまう&面白さはもうこれ約束されているようなあんばいなのですけれど、先日、第一巻が刊行されました。

 池澤さんによる新訳『古事記』

 

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 素敵な桃色に金色の鳥の箔押しがなんとも雅なたたずまい。装画は、拙著『先端で、さすわ さすわ そらええわ』の表紙でも絵をお借りしたことがあります、現代美術家の鴻池朋子さん! 混沌&うねうね&いのちの諸々がねっとりあっさり爆誕するイメージが鴻池さんの絵にぴったり。どきどきしますわね。さらに、この全集にまつわるさまざまなイベントなども目白押しらしく、こちらでチェックしてくださいませなー!!

 

 

 さて、わたしの四大ミューズといえば、樋口一葉、ジョディフォスター、青柳いづみ……そして葛飾応為なのですが、その応為の絵をじかで見ることのできるほんとに数少ない機会ゆえ、燃え尽きた心身をずりずり、上野の森美術館まで行ってきたのでありました。もちろん北斎もめさめさ楽しみだけれど、やっぱ応為!!!!

 

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 連日2時間待ち!とかっていう話だったので、午前中いちばんのり!のつもりが思い切り出遅れて午後になってしまっていったいどうなることかと思ったけれど、この日はなぜかすいていて10分とかでするする入場。

 

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 しかし開場はさすがの激込みで隣の人の息がほおをしっとり湿らす近さ。けれどもみんなの譲り合いの精神がぽかぽかと発揮されて、予想以上にひとつひとつをゆっくりたっぷり見ることができました。富嶽三十六景は当然の人気でもちろんやけれども、個人的にぐっときたのはやっぱり『百橋一覧』。「一枚に橋百本描いたる!」っていうのがええやん。ほんで最後の別名の『画狂老人卍』も意味不明っていうか意味わかりすぎるっていうか、なんてゆうかすこぶる2014年的でもあってぴったりやん。きてれつ北斎、切ないやん。北斎のこと思ったら、「何かを作って生きてる人間は死なない程度に今日が何もかもの初めての日という気持ちでがんばろう」ってな気持ちになりますやん。

 

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 ほんで、北斎の花といえば、『紫陽花に燕』もいいけれど、やっぱ『芥子』!この風!……。

 

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 で、タイミング的には旧吉原ではあるけれど、やっぱり気になる一枚『吉原遊郭の景』。しかし左下ふたり女性だけ体が極端に小さいのは何でやのん。そういう気分だったのだろうか。まあとくに珍しいことでもないのだろうけれども、かむろやろうけど、格好からしてかむろにみえへんのが不思議やし、新造にしたら体が小さすぎる気がするし。

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 そしてそして今回のわたしの本丸、見たくて見たくてしょうがなかった、念願の、葛飾応為『三曲合奏図』。もう、何も言うことはありません。素晴らしかったです。残りの絵、いつかぜんぶ見ることができる日はくるのだろうか。とはいえ、花の絵がいま長野に来てるし、カナダの作家、キャサリン・ゴディエによる小説『応為と北斎』も刊行されたし、杉浦日奈子さんの『百日紅』もアニメになるという話もあるし、なにげに応為づいてはいるのよね! この機会に、ぜひとも山本昌代さんの『応為坦坦録』も復刊してくれ!!

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  そしてわたしはまた原稿書き&ゲラの毎日へ……。応為、一葉、最高最高ありがとう。

2014.11.10

お手紙をくださった彼女たちに

 

 『きみは赤ちゃん』を刊行してから色々なところでたくさんインタビューをしていただいて、そのつどに色々な話をしてきたのだけれど、デビュー当時からずうっと読んでくださってるという女性の方たちからも、うれしいお手紙やメールがたくさん届きました。

 

 みなさんのお手紙には共通する部分があって、それは『<どうして子どもをもとうと思ったのか>について、いつかどこかで書いてくれな」ということで、というのも、過去のインタビューや対談やエッセイなどで、わたしは「子どもをつくることにたいして、かなりの躊躇がある」というようなことを、書いたり話したりしてきたからなのでした。

 

 きっと最初からの読者でいてくれる彼女たちは、そんな考えかたというか気分というかに共感してくれる部分があって、そのうえでその変化というか、思い切りについて知りたいな、と思ってくださったのだと思います。そして「自分もいま、子どもを生むべきかどうか、すごく悩んでいる」と手紙には書かれてあって、たぶん、わたしについてだけじゃなく、子どもをもつことについての色々な考えかたにふれたいなと思ってらっしゃるのかもしれません。

 

 わたしが子どもを、もつ、というよりは存在させることを手放しでいいことやな、と思えなかったのは、社会との関係とか、自分が親になれるかどうかとか、そういう具体的なものではなくて、もっともっと単純なものでした。相談もなしに誰かをこの世界に一方的に登場させてしまうことが、すごく、なんというか、あまりにものすごすぎることのように思えて、こっちの勝手な思い込み&価値観だけで、とりかえしのつかないそんなことをやってしまってよいのか、という疑問が、子どものころからべったりはりついて、それが拭えなかったからでした。たとえば、おなじ子どもを育てるのであれば、無いところに有るをつくるより、すでに生まれてきてしまって親を必要としている子どもを養子にするほうが、なんというか、どちらかというといいことなんじゃないかと、そんなふうに思えていたのです。

 あとは、自分の母親にたいする気持ちも、けっこう大きな問題でした。

 そんなふうに十代、二十代を過ごしてきて、三十代で色々な環境の変化があって、それにともなってわたし自身にも変化があり、そして35歳でわたしは自分で選択して、妊娠、そして出産するわけなのですが……。

 

 先日、雑誌「kodomoe」さんでインタビューを受けました。

    これまでたくさん作品や自分のことについてお話する機会はありましたが、今回のインタビューは、分量もたっぷりある記事ということもありますが、これまでとはちょっと違った雰囲気&内容になったと思います。インタビュアーは、島﨑今日子さん。これまで「なんていい記事なんだろう、なんて読み応えのあるインタビューなんだろう……」と思えばかなりの確率でそれが島﨑さんのお仕事だったということもあって、当日は緊張しながら、そして本当に楽しい時間を過ごすことができました。

 

 いつだったか、誰かが言っていたことで印象に残っているのですが、いいインタビュー記事というのは、まとめが上手だったとか、うまく着地させることができているとかそういうことではなく、話す側が自分でもまるで想定していなかったことを話し(取材される機会が多いと、質問にたいする答えを自然に用意するようになってしまいます。よくも悪くも見取り図ができてしまうのです)、一見脈絡なくみえるいくつかの話のなかの文脈を見極め、インタビュイー自身が知らなかったこと、まだ言語化できていなかったことをまるで導かれるようにその場で言葉にしてしまい、それが活字になったようなもので、今回は、本当にそうとしか言えない体験でした。

 

 心のこもったお手紙をくださったみなさんへ、そして、いつも版元にお手紙を送ってくださるみなさんへ、本当は、おひとりおひとりにお返事差しあげたい気持ちなのですが、なかなかそうもできなくて、ごめんなさい。そして、ずいぶん遅くなって、ごめんなさい。今回のロングインタビューが、みなさんがお手紙に書いてくださった質問への何かしらのお返事になっていれば、とてもうれしいです。どうぞよろしくお願いします。

 

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2014.10.08

秋の、さまざまなお知らせ

 空気の低いところ深いところをよく知ってる知らない匂いが流れて秋だね。
 腕ひんやり頬だけ熱くて、刺繍糸、気づけばぜんぶどっかにいった。

 今日も今日とてお知らせが!
 
 

 『中原中也研究 19』
 去る四月に中原中也記念館で行われた穂村弘さんとの対談「中原中也、その愛と魅力と謎」を収録されております。すべてそのままの採録となっておりまして、それぞれがとりあげた作品の読解、いわゆる中也の「名辞以前の謎」について、「春の日の夕暮れ」の冒頭のせんべいって何ですか問題、あとは子どもを亡くした体験とその詩作との関係について……などなどてんこもりですので、中也に興味あるかたはぜひ、お読みくださいませ。そして、こちらは基本的に中原中也記念館でのお取り扱いになっておりまして、
それ以外では、

東京/西秋書店、中央大学生活協同組合書籍店 
埼玉/ポエトリーカフェ武甲書店 
長野/譚詩舎 
愛知/ウニタ書店、精文館書店 
京都/三月書房
山口/文榮堂本店・山口大学前店

となります、よろしくお願いいたします!

 
○ 『新潮』11月号
 新潮新人賞の選評を寄せております。
 受賞は、高橋弘希氏「指の骨」。
 全選考委員一致での授賞で異例の早さで決定しました。
 ぜひ、お読みくださいませ。
 
○ 『SPUR』11月号
 モードとともに25年。ここで改めて基本に立ち返って、素直な気持ちで聞いてみた。ワールドワイドな100人に質問 「あなたにとってファッションってなんですか?」に答えました。ぜひご覧くださいませ。
 
○ 『MAMA MARIA』vol.2
 蜷川実花責任編集のママ雑誌! 
「今までのママ雑誌がしんどい」そんな働くママに捧げます!
 実花さんとの対談で登場しております。
 子どもをどのように育て、また教育すればよいのだろうか……私立に通わせるのか、公立でよいのか。
 お受験&幼児教育などなどそういうことにいっさい興味のないわたしだけれども、
 一生懸命あれこれ考え、実花さんと真剣に語り合いました。
 生んで数年ではやこのような事態が待っているなんてのう……。
 ぜひ、お読みくださいませな。

紗栄子、岩堀せり、紗羅マリー、鈴木えみ、内田春菊、西原理恵子、川上未映子、大竹しのぶ、君島十和子、小島慶子、神崎恵・・・他のママ雑誌では到底登場しないメンバーが、責任編集の蜷川実花とともに、自己の体験を赤裸々に明かしつつ、働くママのリアルな現状、子育てと仕事について語りつくします。
「専業主婦は薄い氷の上に存在している幸せ」
「仕事は自由の翼。子どもが生まれたからといって手放してはダメ! 」
ファッションやメークだけではない、全く新しいMAMAムックの第2弾です。

 
○ 「フランスで読まれる川上未映子」
2014年11月19日 
18:00?20:30
日仏会館 一階ホール
一般公開、入場無料

お申し込みは、こちらから!

【趣旨】
作家、川上未映子の作品は近年フランスで高く評価されており、また、現地のフェミニスムの観点から興味深い読みがなされていることもある。翻訳者パトリック・オノレとの対談では、具体的な例を挙げて、翻訳を通じて作品がどのように解釈されているのか、どのような読者層の支持を得ているのかを紹介する。また、作者本人がフランスでの反応に対しどのような印象を抱いたのかを考察する。

【ディスカッサント】 パトリック・オノレ(翻訳家)
【司会】 関口涼子(作家、翻訳家)

2014.10.02

「すべて真夜中の恋人たち」文庫化を記念して、「フランスで読まれる川上未映子」開催だよん

 早いもので『すべて真夜中の恋人たち』も文庫化の運びとなりまして、そうかあ、あれから3年くらい時間が経ったということやのかあ。あれも秋だったのう。妊娠初期のつわり地獄で、わかめを噛むことしかできなかったのを思いだします。ともあれ3年。ということは、そのあいだに短編書いたり、『きみは赤ちゃん』を書いたり、連載コラムも書いたりで、いつもずっと仕事ばっかりしてるはしているけれども、しかしわたし3年くらい長編を発表してないってことでもあって、心はあせるわ。はよ書きあげてはよ読んでもらいたいおすわ。
 
 で、『乳と卵』など拙著は色んな言語に翻訳されて刊行されているのですが、
 この春ごろに『すべて真夜中の恋人たち』もフランスで刊行されました。
 初夏に訪れたジュネーブ&パリは、シンポジウム参加にくわえてそのプロモーションのためでもあったのですが、そのときの通訳でもたいへんにお世話になり、そしてわたしの大切な翻訳者にして友人であるパトリック・オノレさんが来日して、このたび、お話することになりました。そして贅沢にも、司会というか進行役を引き受けてくださったのは詩人の関口涼子さん(うれしい……)。

 日本語で書かれた作品が翻訳され、
 まだ見ぬ読者に届くまでの過程や、その困難と面白さ、そして、翻訳という現場で何が起きているのか。 またジェンダーと文学について、詩と散文についてなど、
 当日はもう本当に色々な話をしたいと思っておりまーす。
 同時通訳もつきます。
 みなさま、ぜひこの機会にお越しくださいませな。
 ほいでもってこちらは、ちょっとまえにフランスのル・モンド紙に掲載されたインタビューです。
 発行はもうちょっとあとになるけれど、講談社の「INPOCKT」で『すべて真夜中の恋人』特集を組んでくださる予定ですので、そこに訳文も掲載されます。ちょっと時間差あるけれど、またお知らせしますので、合わせてぜひご覧くださいませな。

 

Kawakami  Le Monde

 

「フランスで読まれる川上未映子」
2014年11月19日 
18:00〜20:30
日仏会館 一階ホール
一般公開、入場無料

お申し込みは、こちらから!

【趣旨】
作家、川上未映子の作品は近年フランスで高く評価されており、また、現地のフェミニスムの観点から興味深い読みがなされていることもある。翻訳者パトリック・オノレとの対談では、具体的な例を挙げて、翻訳を通じて作品がどのように解釈されているのか、どのような読者層の支持を得ているのかを紹介する。また、作者本人がフランスでの反応に対しどのような印象を抱いたのかを考察する。

【ディスカッサント】 パトリック・オノレ(翻訳家)
【司会】 関口涼子(作家、翻訳家)

【登壇者プロフィール】
◎ 川上未映子
2007年、デビュー小説『わたくし率 イン 歯ー、 または世界』が芥川賞候補となり、次いで2008年『乳と卵』で同賞受賞。フランス語の他に、中国語(簡・繁体字)、韓国語、ベトナム語、スペイン語、ノルウエー語などに翻訳されている。
その後2009年に『ヘヴン』、2011年に『すべて真夜中の恋人たち』(ともに長編小説)を発表、ベストセラーとなる。
さらに2013年刊行の短編集『愛の夢とか』と合わせ、高い評価を得る。
詩人としての才能も高く、詩集2冊があるほか、エッセイ集・対談集多数。

◎ パトリック・オノレ
2003年より日本の現代・現在文芸 、児童文学、漫画など幅広く取扱い100冊以上の作品を訳す。2010年、リリー・フランキー『東京タワー、オカンとボクと、時々、オトン』(第17回日仏翻訳文学賞(小西国際交流財団主催)受賞 (Philippe Picquier出版)。漫画では水木しげる『のんのんばあとオレ』が2007年アングレム国際漫画祭最優秀作賞を受賞(Cornélius)。 川上未映子著作品では『乳と卵』、『すべて真夜中の恋人たち』、『ヘヴン』 (すべてActes Sud)を訳す。その他の主な翻訳に綿矢りさ、古川日出男、橋本治、小野不由美、内田百閒、夢野久作、他。

◎ 関口 涼子
1997年よりパリ在住。日本語とフランス語で著作活動を行う。著作に Ce n’est pas un hasard (POL), L’astringent (Argol), 翻訳に『悲しみを聴く石』(アティーク・ラヒーミー、白水社)、『素晴らしきソリボ』(パトリック・シャモワゾー、河出書房新社、近刊)など。近年は味覚と文学をテーマとした執筆活動をフランス語で行っている。2012年フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受賞。2013年−14年フランス文科省招聘でローマのヴィラ・メディチに滞在。

【主催】 日仏会館フランス事務所
【助成】 (公財)小西国際交流財団
【協力】 講談社


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