川上未映子



2016

2016.09.21

トークショウ@渋谷マークシティ

 今年の夏は雨と台風でいっぱいだったようなそんな日々が過ぎて気がつくと秋、ニットかねそろそろ。

 近づいてきたのでお知らせします、みなさまにお会いできるのを楽しみにしています。ファッションについてやし、何きていこ。なお今回のイベントは無料になっておりますので、みなさまふるってー。

 

川上未映子スペシャルトークイベント
2016年10月1日(土)16:00~16:40
渋谷マークシティ 1F イベントスクエア

2016.09.13

世界の秘密に指がふれたり

 

 SWITCHインタビュー・達人達、新海誠さんとの対談をたくさんの方に観ていただけたようでうれしかったです。わたしはばたばたとしていて未見なので対話のどこがどんなふうに使われたのかわからないのだけれど、『いい雲はどのようにして生まれるか』、『ここではない、もうひとつの世界が存在しているという実感』のお話がとくに印象深くて、でもどっちもあんまり時間がなくて、もっとお話を伺いたかったんだけれど……。

 

 映画であれ小説であれ写真であれ何であれ、優れた作品には必ずフィクションとしての強度が最大限に発揮される、その作品に固有の瞬間がある。『君の名は。』には、見終わったあとに「もしかしたら、自分のこの現実の人生にも、あの映画の中で起きていたようなことが、本当は起きているのかもしれない」と思わせる不安と恍惚の手触りがあるんですよね。

 

 つまり、今、自分が誰かといるとして、あるいは誰かといないとして、その誰かとのあいだに──三葉と瀧くんのあいだで起きたようなことがもしかしたら起きていたのかもしれない、我々はそのことを確認する術をついぞ持たないけれど、でもそれがなかったなんていったい誰に言えるのか、というような  ”そわそわ” を、言葉にしてもしなくても、受け取るんだと思います。フィクションと現実の結び目は作品の数だけ、人の数だけあるけれど、その実感こそが、現実の一回性を否応なく生きるしかない我々が飽きもせずフィクションを求める理由のひとつではないかと、そんなことをあらためて思いました。確かめることはできないけれど、それでもやっぱり世界の秘密に指先が少しふれたような、一瞬だけ横切るその影を認めたような、そんな瞬間がこれ以上はない物語のピークで炸裂していて、素晴らしいことだと思いました。

 

 人がある作品に出会うとき──そこには作品と自分以外の多くのものが立ち会うわけで、何歳で、どんなことが苦しくて、どんなことが不安で、どんな場所をふうに歩いていたか、どんなふうに風が吹いて、何がどんなふうに光ったり光らなかったりしていたか、何が遠くて、なにをさわって、何を感じていたか──何年も時間が経って、もしその作品と再会することがあるならばそのとき、それらがひとつのかたまりとなって、匂いとも思いとも記憶ともいえないような「体験」として、またその人にやってくる。

 

 今、十代、二十代の方々に『君の名は。』がすごくたくさん観られていると伺って、いつかずっとさき、彼らのなかで、時空をひょいっと飛び越えて、いつも何度でもふれることのできる特別な体験として保存されればいいな、素晴らしいことだな、と心から思っています(わたしの場合は、その筆頭はもちろん銀色夏生さんなのですが(笑)詳しくは、わたしが銀色夏生さんについて熱く語っている穂村弘さんとの対談『たましいのふたりごと』をお読みください!)

 

 とまれ、たとえば少年少女が出てくる 『あこがれ』『ヘヴン』が、もしそのような体験として誰かのなかに残るのだとしたらそれは本当にうれしいことよなあ……みたいなことをしんしんと感じつつ、次回作も一生懸命、書いて書いて、かたちにしていきたいと思います。がんばります。

 

 再放送は、9月15日木曜 午前0時(9月14日水曜深夜)だそうです!

 見逃されたかたはぜひ、ご覧になってくださいね!……しかし、初めてお会いした新海誠さん、何が驚いたって、ちょっと驚くぐらい人格というかそれこそ精神というかが安定していらっしゃる感じがすごくして、後日もその印象について考えていました。それで、「新海監督、パイロット感あるな……」と。機長です。わたしは飛行機が苦手なんですが、新海さんみたいなパイロットだったらもうしょうがないかな、と思わざるをえないような、それはもう破格の安定ぶりでいらっしゃいました。あとやっぱり医者ですね。しかも、現実に存在している医者よりも医者らしいというか、もはや概念上の医者というか。またお目にかかりたいです。

 

 

2016.09.10

News 訳詞

ノラ・ジョーンズの新しいアルバム『Day Breaks』の歌詞を翻訳しました。

シングル・カット『Carry On』の公式ビデオ。
字幕をオンにすれば川上未映子の訳詞が出てきます。

 

2016.09.08

試す

 

 

本を試す。つめを試す。それから水曜日をうんと試して、まぶたのうえのくせ毛も試す。ペンを試して、鏡を試す。約束を試して、全音符をしつこく試して、牛乳の薄い膜まで何度も試す。帯を試して、帽子を試す。取っ手を試す、襟足とアキレス腱と誤字脱字と十二歳の夏を試して、書き置きを試してドアを試す。腰を試して抱きしめを試して唇からでてくる言葉を試す、すごく試す、写真を試して嘘を試して、それからまた抱きしめを試してふたりきりで泣くのを試す。死んでしまった悦びを試して虹を試して銀行を試して薄暮を試してハンガー、まくりあげたそで、シーツの冷たくなった場所を試して遡ることを試してみる。わたしの知らないあなたのこれまでの時間の縫いかたのぜんぶを試す、匂いを試す、やさしかった昼寝を試してゆるしを試して笑顔を試す、それからまた抱きしめを試して接吻を試す、ああ接吻を試す。五年のあいだ試しつづけて、いちばん最後に別れを試す。

 

  *

うえの「試す」はわたしの詩で、もちろんノラとは関係ないけれど、しかしどこかで何かが繋がっているような気がしないでもない、2016年・夏と秋の境目なのだった。というわけで、ノラ・ジョーンズの新しいアルバム『Day Breaks』を訳しました。楽しかった。ぜひ聴いてみてくださいませな。

 

2016.09.04

News 秋の渋谷 4

川上未映子が綴る、秋の渋谷マークシティ 4

川上未映子スペシャルトークイベント
2016年10月1日(土)16:00~16:40
渋谷マークシティ 1F イベントスクエア

2016.09.04

News 秋の渋谷 3

川上未映子が綴る、秋の渋谷マークシティ 3

渋谷マークシティで「読む」おしゃれを楽しもう・「Fashion×book」館内壁面装飾展開
川上未映子書き下ろしオリジナル散文詩を展開いたします。
2016年9月1日(木)~11月9日(水)
渋谷マークシティ 4F ショッピング&レストランアベニュー
「梅丘寿司の美登利」前壁面

2016.09.04

News 秋の渋谷 2

川上未映子が綴る、秋の渋谷マークシティ 2

「おめかしの言葉」プレゼントキャンペーン
期間中3,000円(税込)以上お買い上げいただいた方を対象に、川上未映子書き下ろしエッセイフォトブックと渋谷マークシティでご利用いただける商品券が抽選で当たります。
応募期間:2016年9月1日(木)~9月30日(金)
対象店舗:渋谷マークシティ物販・雑貨・サービス店舗
※飲食店舗、フライング タイガー コペンハーゲン、東横のれん街、渋谷 エクセルホテル東急、京王観光、啓文堂書店、ジェルフラワー、QBハウス、K-Shop、サンクス、サブリナシューシャイン、および催事店舗を除く

2016.09.04

News 秋の渋谷 1

川上未映子が綴る、秋の渋谷マークシティ 1

エッセイ風リーフレット館内設置
2016年9月1日(木)~2016年11月9日(水)

2016.08.31

News 9月10日夜10時テレビ

SWITCHインタビュー 達人達「新海誠×川上未映子」
NHK Eテレ1
9月10日土曜 午後10時00分~ 午後11時00分
再放送 9月15日木曜 午前0時(9月14日水曜深夜)

2016.08.12

News 対談 生きても生きても

伊藤比呂美×川上未映子
対談 生きても生きても、生ききれないほどおもしろい
母で、女で、もの書きで
『婦人公論』2016年8月23日号

 6月の『婦人公論』創刊100周年記念トークイベントでの対談が掲載されました。


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