川上未映子

2019.06.21

わたしのおばあちゃん

 

5月の末に、母のようにわたしを育てた祖母が亡くなりました。
昔からの読者のかたには、
エッセイなどでわりと馴染みのある祖母で、
大往生で、これ以上はないお別れができたと思います。
物心ついたときからずっと恐れていたことが
実際の出来事になってゆくのを見ているのは、
不思議な気持ちでした。

 

老衰で、体が役目を終えようとしていて、
最後はわたしの判断で点滴を外して、
最期を看取ることができました。

 

「夏物語」にはいろんなことを書いたし、
もちろんフィクションなんですが、
主人公の夏子が祖母の「コミばあ」を思う気持ちは
わたしのものでした。
老衰だから、去年でも、もっと前でも、
もしかしたら来年でもよかったかもしれないのに、
「夏物語」を書き終えたタイミングでいなくなっちゃって。
単なる偶然なんですけど、
「もー!おばあちゃーん!」
という感じです。

 

もっとああしていたら、とか、
わたしが東京でなんでもない時間を過ごしていたあのときもあのともおばあちゃんは生きていて、会おうと思えば会えたのだと思うと、
たまらない気持ちになります。

 

「あこがれ」を書いたとき、
人はすぐにいなくなるから、
会いたい人がいるなら、会いに行かなきゃと書いて、
すごくちゃんとわかっているつもりでいたけど、
わたしはなんもわかってなかったな。
いや、どうなのかな。
どうしたって、思ってしまうことなのかもしれないな。

 

仕事も、悩みも、やらなければならないことも、
迷いも悲しいこともあるけれど、
ままならないことばっかりだけど、
みんな、なんとか、なんとか!
みなさまが、
穏やかな毎日を過ごされますように。

 

 

obaacyan

 

 


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