川上未映子

2015.02.02

たけくらべにさわる 〜『たけくらべ』現代語訳刊行記念イベントにつきまして

 

 

しかし冬。みなさま、頬、腰、くるぶし、お元気。

 これまで何回かにわたってお知らせしてまいりました、樋口一葉『たけくらべ』の新訳が、2月10日ごろに発売になりまーす。よかっつー!!!(よかったの複数形)

 こちらは河出書房新社から、今後数年間にわたって刊行されます「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」のひとつになります!

 去年の秋に刊行されました池澤夏樹訳『古事記』、 表紙の色も、鴻池朋子さんの絵の帯もうるわしく、書店でも平積みで大好評! そして第二弾は中上健次『鳳仙花』、第三弾が、この『たけくらべ』になります。

 

ほかに収録されますのは、夏目漱石『三四郎』、森鴎外『青年』。明治の東京を舞台に繰り広げられる思春期&青春小説みっつだよ。ただいま予約受付中ですので、ぜひお求めくださいませ!

 そしてこちらが『たけくらべ』の表紙になります。帯の絵は、漫画家の浅生いにお先生の作品でございます。

 ところでこの表紙を見た友人・知人から、「なんで帯にあんたが……」的な突っ込みをたくさんいただいているのですが、すみません。この帯の女性はわたしではなく、ご存じ『三四郎』の美禰子なのです。そう、編集部から「現代版の『美禰子』(何気ない仕草にぐっときてしまう男子目線で描いた、きれいなお姉さん。かといって年上感ではなく、「たけくらべ」の美登利にも通じるような少女感も残したかわいさがある女子)を描いてほしい」という依頼を受けられた浅生いにお先生による、現代版・美禰子なのです。たしかに髪型おんなじですけれど、そう言われてみるともう美禰子にしか見えないこの不思議。美禰子美禰子、わたしの処女作に出てくるのは三年子。ああわたしたち、いつだってストレイシープ。

 

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そして先日もお知らせしました、イベントの詳細が決まりましたわーい。予約も不要で、無料なので、みなさんぜひ、聴きにいらしてくださいな。

 第 1部は、『たけくらべ』について色々なことをわたしが全力&全愛でもって語るという、少々暑苦しい会になるかもしれませんが冬だしいいよね。内容はこれから色々と考えたいと思っていますが、原文と今回わたしが訳した文章を比較したり、具体的なところ&細々したところも多くなるのやもしれません。なので、できますれば、みなさまぜひ今回の現代語訳版をお読みいただいてからのご参加、ということになれば諸々がなお豊か、わたしはめさめさうれしかったりします。 そしてちょっとかわった朗読もやる予定でいます。『たけくらべ』が好きな人も、これまで興味のなかった人も、ふうん、ちょっと読んでみよっかなーと思ってくれたりしたかたも、そうでないかたも! 当日は『たけくらべ』の魅力について精一杯お話したいと思っております。どうぞみなさまよろしくお願いします。そして第2部は、座談をします。こちらもいったいどんな内容&お話ができるのが今からすごく楽しみ。

 

   

「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」

第13巻『樋口一葉 たけくらべ/夏目漱石/森鷗外』刊行記念
東京大学で一葉・漱石・鷗外を読む

2015年2月22日(日)14時開演(13時30分開場)

場所:東京大学本郷キャンパス法文2号館1番大教室
アクセス:丸ノ内線・大江戸線「本郷三丁目」、南北線「東大前」下車、徒歩10分

予約:不要(先着順。会場は約220人収容)。当日12時30分より会場入口で整理券を配布。
満席の場合は、入場をお断りする場合もあります。
入場:無料

第1部 14時〜15時
「たけくらべ」にさわる
川上未映子(作家)

第2部 15時15分〜16時45分
シンポジウム・明治の青春小説の魅力
池澤夏樹(作家)×川上未映子(作家)×紅野謙介(日本大学教授)×沼野充義(東京大学教授)

 

昨年11月から刊行が始まった「池澤夏樹=個人編集 日本文学全集」。その第13巻『樋口一葉 たけくらべ/夏目漱石/森鷗外』が2月に刊行されます。収録作品は、明治を象徴する青春小説「たけくらべ」「三四郎」「青年」の三作。それぞれの作家・作品にゆかりの深い本郷の東京大学で、各作品の魅力と明治の文学について、全集編者の池澤夏樹氏、「たけくらべ」の新訳に取り組んだ川上未映子氏、近代文学が専門の紅野
謙介氏と、東京大学現代文芸論研究室の沼野充義氏が語り合います。

お問い合わせは、東京大学文学部現代文芸論研究室 Tel&fax:03-5841-7955
E-mail:genbun@l.u-tokyo.ac.jp までよろしくです。

 

 

2014.12.22

スパゲッティ再訪

 

年末進行が縦横無尽に走りまくるこの師走の忙しい時期に書くことでもないかもしれないけれども、や、忙しいからこそのいま! 書かねばならないのかもしれず、というか、ここ最近このことを書きたくて書きたくてじつはうずうずしてたのよ。いったい何のことかというと、そう、それはスパゲッティのゆでかた&食べ方についてなのです。

 

もしかしたらこんなのはとっくに常識なのかもしれないけれど、わたしにとってはすこぶる画期的&目から鱗だったのです。わたしは1年365日のうちのじつに340日の昼食にスパゲティを作って食べる生活をしているのだけれども、このあいだ、ある発見をしたのやった。まあ時間もないし、ちゃっちゃと言ってしまうと、それは「スパゲティを半分に折ってからゆでると全方位的に最高」という、すごく単純なことなのやった。

 

スパゲティを半分に折ると素晴らしいのは、何よりもゆでるとき。

 

スパゲッティをゆでるときのあれこれは、少量の水でゆでる方法とか、レンジを使ったり容器を変えたりなんだりと、これまでもいくつかあった。けれども麺を半分に折るというのはもっと単純で、そう、小さな手鍋の本当に少しの水を沸騰させるだけで事足りるのである。

 

スパゲティが長いままだと上の部分がくにゃりんとなって滑り落ちるまで時間がかかるし、水はまあ少量でよくても、 お鍋じたいはある程度の高さがないとだめだった。しかし麺をあらかじめ半分に折っておくことによって直径20センチ足らずの手鍋で難なく茹でることができるようになる。これはこうして読んでみるよりもじっさいにやってみるとそのミニマムな感じの良さがよくわかる。グッバイ寸胴鍋!

 

水を沸騰させる時間が圧倒的に短縮できて最高なんだけれど、さらにすてきなのは食べるとき。折ったことによって麺が短くなると「フォークでくるくると巻きにくくなるんでは」「よって食べにくくなるのではないか」と思われるかもしれないけれど、そんなことはまったくなく、むしろ逆。まじで逆。まったく問題なくフォークにちゃんと巻くことができて、どころか、いつもは巻くのに2回転から3回転を要していたのが1回転ですみ、一度の食事の時間もわずかながら短縮できることになり、塵も積もれば理論でいくと、相当な時間を確保することになって、これも最高というわけなのだった。

 

そんなんとっくに知ってるわ、でしたらすみません……でも、わたしにとってはものすごい大発見だったのです。スパゲッティ好きのみなさまにスパゲティのべつの一面を伝えたくて、つい書いてしまいました。やったことない人はぜひやってみてね。

 

クリスマスもお正月もとくになく、今年もまたずるずると仕事をすることになりそうです。なぜならなぜなら……年末進行だっていうんでひいひい言いながら入稿ばっかりしてるのに、かと思うといくつかのゲラの返却が、なぜかどういうわけか、明けてすぐの1月6日とかに設定されているのだから、そうなるよね。「いえ、お正月は休みます」とはっきり言えない気の弱いわたしなのだった。

そして『きみは赤ちゃん』、おかげさまで8刷に! みなさん楽しく読んでくださってるみたいで、とてもとてもうれしいです。そして『すべて真夜中の恋人たち』もあっというまに5刷に……! 物語はちょうど12月、冬の、このあたり。しんしんと何かが残りますように、胸に、真夜中に。

2014.10.30

つくる男とつくる女、絵本の寄り添い、そして無理すじの桃太郎

 だんだん寒くなってセーター着たらちくちく、かゆかゆ、いつのまにか発生する毛玉って食器を洗うスポンジでさっさっとなでるだけできれいにとれてしまうらしいね、試したことはないんだけれど。

 

 ただいま発売中の VOGUE JAPAN 12月号に、阿部和重×川上未映子で登場しております。VOGUEの今号のテーマは「男と女」ということで、「つくる男とつくる女」という特集で、ふたりでインタビューを受けました。内容は、創作や生活において男と女のあれこれがどうなっているか、などなど様々な感じになっております。ポートレイトも掲載されており、撮影は操上和美さん。撮影の現場は素晴らしくあっと瞬くまでしたけれどもまたいつかみなさんとご一緒したいと思えるすてきな時間でした。今号&記事の詳細はこちらでも。

 

 ……ところで、『きみは赤ちゃん』のインタビューなどで、「で、この本を読んでの阿部さんの感想って、どんな感じですか……」と聞かれることがほんっとに多いんだけれど、じつはあべちゃん、まだ読んでないんだよね……。そう言うと「えええええええ」と驚愕し、そして「そ、そんなことがあっていいのか……」と心の底から震えてくれるんだけど、そう、あべちゃん、まだ読んでないんだよね! なんかすっごい忙しかったみたい。でもきっと、いつか読むはず……。

 

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 そして、玄光社さんより発売されております『子どもと一緒に読みたい絵本』にエッセイを寄稿しました。

 

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 子どもを絵本を読むということが連れてくる摩訶不思議でありつつも、しかしとてもとてもよく知っている感覚について書きました。おすすめの絵本、そしてわたしと絵本の思い出についてもふれています。

 絵本って、めさめさあるけど、おなじくらいどれにしようか迷いますよね……しかしこれがあれば安心だ!まるで絵本のエキスパートたちが寄り添って「これはどない……」「これもええで……」と(大阪弁ではないけれど)あれこれ教えてくれているような、そんな温かさにみちたすてきな一冊なのです。絵本対策はこれで安心! 絵本のことはまかせとけ! ぜひお手にとってご覧ください!

 

 今日も明日もインタビューで、来月にはトークショウもありますし、年内はまだまだ『きみは赤ちゃん』モードのわたしなのだった、なむなむ。そしてAmazonでは相も変わらず品切れだけど、しかしこの数ヶ月でAmazon品切れ耐性がばっちりついたわたしはもうそんなことは気にしない。そうしているうちにいつだって10月は退場なのだけれど、来週発売される週刊新潮には、義家衆議院議員による、池澤夏樹さんの桃太郎解釈批判について書きました。そして文庫版『すべて真夜中の恋人たち』も、さっそく重版のお知らせが。冬にむかう秋のはじまりに、読んでくださってるのがすごくうれしい。ありがとう……ああ、ほかにもお知らせがあったような気がするけれど、こぼれていたらまた追って! いまからスパゲティ食べ食べ取材にいってきまうまだ、着るもの迷う、シーズンだよね。

2014.10.08

秋の、さまざまなお知らせ

 空気の低いところ深いところをよく知ってる知らない匂いが流れて秋だね。
 腕ひんやり頬だけ熱くて、刺繍糸、気づけばぜんぶどっかにいった。

 今日も今日とてお知らせが!
 
 

 『中原中也研究 19』
 去る四月に中原中也記念館で行われた穂村弘さんとの対談「中原中也、その愛と魅力と謎」を収録されております。すべてそのままの採録となっておりまして、それぞれがとりあげた作品の読解、いわゆる中也の「名辞以前の謎」について、「春の日の夕暮れ」の冒頭のせんべいって何ですか問題、あとは子どもを亡くした体験とその詩作との関係について……などなどてんこもりですので、中也に興味あるかたはぜひ、お読みくださいませ。そして、こちらは基本的に中原中也記念館でのお取り扱いになっておりまして、
それ以外では、

東京/西秋書店、中央大学生活協同組合書籍店 
埼玉/ポエトリーカフェ武甲書店 
長野/譚詩舎 
愛知/ウニタ書店、精文館書店 
京都/三月書房
山口/文榮堂本店・山口大学前店

となります、よろしくお願いいたします!

 
○ 『新潮』11月号
 新潮新人賞の選評を寄せております。
 受賞は、高橋弘希氏「指の骨」。
 全選考委員一致での授賞で異例の早さで決定しました。
 ぜひ、お読みくださいませ。
 
○ 『SPUR』11月号
 モードとともに25年。ここで改めて基本に立ち返って、素直な気持ちで聞いてみた。ワールドワイドな100人に質問 「あなたにとってファッションってなんですか?」に答えました。ぜひご覧くださいませ。
 
○ 『MAMA MARIA』vol.2
 蜷川実花責任編集のママ雑誌! 
「今までのママ雑誌がしんどい」そんな働くママに捧げます!
 実花さんとの対談で登場しております。
 子どもをどのように育て、また教育すればよいのだろうか……私立に通わせるのか、公立でよいのか。
 お受験&幼児教育などなどそういうことにいっさい興味のないわたしだけれども、
 一生懸命あれこれ考え、実花さんと真剣に語り合いました。
 生んで数年ではやこのような事態が待っているなんてのう……。
 ぜひ、お読みくださいませな。

紗栄子、岩堀せり、紗羅マリー、鈴木えみ、内田春菊、西原理恵子、川上未映子、大竹しのぶ、君島十和子、小島慶子、神崎恵・・・他のママ雑誌では到底登場しないメンバーが、責任編集の蜷川実花とともに、自己の体験を赤裸々に明かしつつ、働くママのリアルな現状、子育てと仕事について語りつくします。
「専業主婦は薄い氷の上に存在している幸せ」
「仕事は自由の翼。子どもが生まれたからといって手放してはダメ! 」
ファッションやメークだけではない、全く新しいMAMAムックの第2弾です。

 
○ 「フランスで読まれる川上未映子」
2014年11月19日 
18:00?20:30
日仏会館 一階ホール
一般公開、入場無料

お申し込みは、こちらから!

【趣旨】
作家、川上未映子の作品は近年フランスで高く評価されており、また、現地のフェミニスムの観点から興味深い読みがなされていることもある。翻訳者パトリック・オノレとの対談では、具体的な例を挙げて、翻訳を通じて作品がどのように解釈されているのか、どのような読者層の支持を得ているのかを紹介する。また、作者本人がフランスでの反応に対しどのような印象を抱いたのかを考察する。

【ディスカッサント】 パトリック・オノレ(翻訳家)
【司会】 関口涼子(作家、翻訳家)

2014.06.20

☆出産&育児エッセイ『きみは赤ちゃん』できたよん☆

 ああ、とうとうこの日がやってきた……!
 刊行はまだちょっとだけ先だけど、でもこんなふうにこみなさんにお知らせできる日が、本当にやってくるなんて……!
 怒涛の執筆中は、書けども書けども書かねばならぬことがあとからあとから溢れだし、「ほ、ほんまに終るんかこれ……」と日々おそろしい気持ちで生活をしておりましたが、ようやく!ようやく完成いたしました!刊行は7月9日なのですが、それにさきがけて今日はいくつかお知らせがありまーす。

 『きみは赤ちゃん』
『きみは赤ちゃん』
 妊娠してからの一年と、出産してから息子が1歳になるまでの、合わせて2年間のすべてをつめこみました。前編の<出産編>は、去年ウェブにて連載をしておりましたものに怒涛の加筆修正をほどこし、そして後編の<育児編>は、すべて、書き下ろしとなっております。

 そして、7月9日の刊行にさきがけまして、「CREA Web」に、特設ページが設置されました!わーい。

 前編のなかから、いくつか立ち読みができたり、
質問&お悩み相談室なるものも!
 採用させていただいた方から抽選で、『きみは赤ちゃん』のサイン本をプレゼントさせていただきます(今回はサイン会を開催する予定がないので、この機会にぜひ。。。>< )
 7月30日が質問などなどのしめきりになっておりまして、応答などなどは、それ以降に同サイトで掲載させていただきたいと思います!

 さらに、19歳のときからの友人(ヘアメイク・36歳)で、本書のみならず、これまでさまざまなエッセイにも登場してきた、そして現在はタイミングよくママ友(というほどママっ気は濃くないような気もするけれど)になった、ミガンとの対談も公開する予定でいまーす。
 それでは以下、目次など〜。

 

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 『きみは赤ちゃん』

出産編 「できたら、こうなった!」

・陽性反応
・つわり
・出生前検査を受ける
・心はまんま思春期へ
・そして回復期
・恐怖のエアロビ
・かかりすぎるお金と痛みについて
・生みたい気持ちはだれのもの?
・夫婦の危機とか、冬
・そして去ってゆく、生む生むブルー
・いま、できることのすべて
・乳首、体毛、おっぱい、そばかす、その他の報告
・破水
・帝王切開
・なんとか誕生
産後編「生んだら、こうなった!」

・乳として
・かわいい♡拷問
・思わず、「わたし赤ちゃんに会うために生まれてきたわ」といってしまいそう
・頭のかたちは遺伝なのか
・3カ月めを号泣でむかえる
・ひきつづき、かかりすぎるお金のことなど
・髪の毛、お肌、奥歯に骨盤、その他の報告
・父とはなにか、男とはなにか
・夫婦の危機とか、夏
・いざ、離乳食
・はじめての病気
・仕事か育児か、あらゆるところに罪悪感が
・グッバイおっぱい
・夢のようにしあわせな朝、それから、夜
・ありがとう1歳

・あとがき

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 気がつけば原稿用紙にして500枚弱とかのヴォリュームになっていて、はこれまで刊行した本のなかでいちばん分厚くなってしまいました。色々な仕事がありますが、『きみは赤ちゃん』はこの時期にしかできない、それに人生で一度、できるかできないかの仕事だったので、執筆は色々と悩むことも多く、今まで経験したことのない難しさがあったけれど、こうして無事にかたちにすることができて、ほっとしております。連載中も、そして連載が終わってからも、さまざまなところで頂戴しましたみなさまの励ましのおかげです。ありがとうみなさん、ありがとう2014年。

 で、ふりかえってみると、本書とはべつに日々の詳細を記録した日記やメモをあわせると、わたしはこの3年のあいだに妊娠&出産&育児にまつわるものすごく大量なあれこれを、つごう1000枚近くも書いてきたわけであって、よくもまあそんなに書くことあるよな……と思うのだけれど、しかし「もう、わたしは書いた、書けることはぜんぶ書いた」というところまで書いたはずなのに、しかしこれだけ書いてもまだ書き忘れたことがあるような、まだまだ書き足りないような……人間をうっかりそんな気にさせてしまうほど、妊娠とは、出産とは、育児とは、嬉しさもつらさも楽しさも、もう全方位的にすさまじいものでありました。
 とはいえ、それらのぜんぶのぜんぶ、現時点でのわたしの情熱と技術の限りを尽くして、「できてからと生んでから、心とからだに起こったすべて」を書き切りましたので、一緒に笑ったり、腹を立てたり、そうそうと肯いてもらったり、信じられへんと突っ込んだり、いろんなふうに楽しんでいただけると本当にうれしいです!!そして「きみは赤ちゃん」関連の続報、これからこまめにアップしていきますので、ひきつづきチェックよろしくう。

 
 
『きみは赤ちゃん』Kindle版が出ました!
専用端末じゃなくても、iPadやiPhoneその他のスマホで無料アプリをダウンロードすれば読むことができます。

2014.05.22

スペイン語の「乳と卵」、そして伝説のコスメ@FRaU

 そういえば少しまえに、「乳と卵」のスペイン語訳が刊行されました。
 表紙がなんともかわいくて、よく見ると無数のおっぱいがデザインされています。

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 なかを見てみると、

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 こちらにもさまざまな時期&かたちのおっぱいがならんでおり、「自分はどれに近いだろうか」的なあんばいで楽しんだり…はしませんか。しおりもついていたりして、おしゃれな一冊になりました。これで「乳と卵」は何カ国で刊行されたのだろうかな。10とかそんなだったろうか?

 

 

 そしていま発売されている「FRaU」で、コスメについてエッセイを書くという連載がはじまっております。みんなも一度は使ったことある&名前やうわさは耳にしてきたであろう、ほとんど伝説になった有名なコスメを毎号とりあげて、それについて書いてゆくという感じ。もうエッセイの連載はしないぞと決めていたのに、コスメと聞くと「ほわん」となってしまいました。第一回目は、ココ・シャネルの赤リップについて書いています。どうぞよろしくう。

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 そして日々のお昼ごはんのスパゲティーなど。
 ボンゴレのスパゲティーはせっかくの貝なので貝だけでいくのがスジ、みたいな考えもあるけれど、わたしが最初に読んだイタリアンのお料理本ではなぜかベーコンが入っており、それ以来、ボンゴレには必ずベーコンを入れるようになってしまいました。塩気はベーコンでってことで。
 ふたつめはナポリタン。フライパンをなるべく動かさないで具に焦げ目をつけるといい感じ。ケチャップの水気を飛ばしてからスパゲティーを投入するといい感じ。最後にバターを入れるといい感じ。

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2014.05.01

そろそろ出国

気がつけば羽田におり、飛行機にのる直前のいまなのだった。GWの並びのせいか、羽田はとても空いていて、しばらく食べられなくなる日本食を食べました。

ジュネーブはシンポジウムに参加するためにゆくのだけど、そのあとのパリは新刊のプロモーション。「すべて真夜中の恋人たち」のフランス版はこれ。

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今年中には「ヘヴン」も刊行される予定なので、楽しみ。ではそろそろ搭乗です。ねむれますように、なむなむ。

2006.05.19

フラニーとゾーイーでんがな

風邪が停滞してついに鼻水が出てくるので、寝起きがとてもつらい。蒸してきた最近、熱のこともあり、アイスノンを枕にして眠っているのですが、すぐに溶けてしまう。例の立派な冷蔵庫の瞬間冷凍室には肉ではなく、アイスノンを入れて、なんかサイズもぴったりで、そんなことのくりかえし。
明日はMTVの年に一度のなんとかアワード、という派手で豪奢なお祭りが、27日にあるらしくって、そのイベントのテーマ映像みたいなものがあって、それに歌を吹き込みに行く、歌っていうか声な。こんな鼻が詰まっていてはどうするんだろうかなあ。ああ。27日に、もしお祭りに行かれる方あったら、是非聴いて下さいね。まだ歌ってないからどんな感じになるのかはまったく想像もつかぬが。
熱のせいか、連続して現実が連なり、そのどれもが夢だった、っていう夢をぎょうさん見てなんかうんざり。

サリンジャーの「ゾーイー」、これってズーイーがほんまもんなんですかね、ゾーイーの兄妹喧嘩のあの台詞のやりとり、私好きやねんけど、ゴッホんときみたくいつか舞台で大阪弁でやったら面白いやろうなあってそこはかとなく思ってたら、なんと昨日たまたま読んでた本で村上春樹氏が「ゾーイーを関西弁で翻訳したい」つって書いててここにもひとつの共時性が。や、関西弁の人はけっこう思ってる人おるんかもね。
そうそう、なんか、標準語、っていうか、あの場合は翻訳調が、ってことになるのかな、ゾーイーの鬱陶しさとか真剣さとか優しさとか、フラニーの駄目駄目っぷりとかさ、自意識と若さの「不毛さ」から「太っちょのおばさん的救い」へ一気に駆け上がるあの素晴らしい素晴らしいくだり、その救いが観念的であればあるほどこんなにも素晴らしく、こういう文章に出逢うと「虚構」と「観念」の出自と効果の鮮やかな一致が、私をとてつもなく喜ばす!のだが、会話というよりもおのおのの独白の端々の素敵なところが、もひとつなんか、こう、爆発、する必要もないのかも知れんけど、開花というか、爆発して浸透する、っていうもっとそのための風景があるんではないかなーと思うわけで、んで関西弁。

例えばレストランでイライラしながらスノッブな彼氏に向かってフラニー
「ちゃうねん。張り合うのが怖いんじゃなくて、その反対やねん、わからんかなあ。むしろ、張り合ってしまいそうなんが、怖いねん。それが演劇部辞めた理由やねん。私がすごくみんなに認めてもらいたがる人間で、誉めてもらうんが好きで、ちやほやされるのが好き、そんな人間やったとして、そやからって、それでいいってことにはならんやんか。そこが恥ずかしいねん。そこが厭やねん。完全な無名人になる覚悟がないのが自分で厭になったんよ。私も、ほかのみんなも、内心は何かでヒット飛ばしたいって思ってるやろ。そこがめっさ厭やねん」

例えば居間の床に寝転んで引き篭もりのフラニーに向かってゾーイー
「そやけど俺の気に入らんのはな、こんなもんシーモアもバディも気に入るわけないけどな、さっきゆうてたやつらの話する時のお前の喋り方や。つまりな、あいつらが象徴してるもんを軽蔑するんやったらわかるけど、お前はあいつらそのものまで軽蔑しとんのじゃ。個人的過ぎるんじゃ。フラニー、ほんまやで。
たとえば教師のタッパーの話した時もやな、お前の目普通ちゃうで。人殺すときみたいにぎらぎらしすぎや。光りすぎや。あいつが教室に来る前にトイレ行って髪の毛わざとばさばさのぼさぼさにしてくるゆうあの話。そら全部お前がゆうたとおり間違いないと思うけどさ、でもそんなもんお前に関係なくないか?あいつが自分の髪の毛をどうしたこうしたってええやんけ、あいつなにを気取ってんねん、ププ、ダサイやつやなー思てたら済む話やんけ。悲壮美なんですねーゆうてそんなもんいちいち演出しなあかんほど自信ないんやなあゆうて、同情したったらええんとちやうの。そやのにお前は、ええか、これだけはゆうとくけどおちょくってるんやないで。お前が喋ってんの聞いとったら、あいつの髪の毛自体が、なんかお前の仇みたいになってて、それはちゃうやろ。んでお前がそれをわかってるっちゅうのがもっと気に入らんわ。
あんな、フラニーな、制度を相手に戦争でもおっぱじめたろかゆうんやったら、頭ええ女の子らしい鉄砲の撃ち方を、せえや。敵はそっちやろうが。あいつの髪の毛がどないしたとか、ネクタイがどうしたとか、んなもん関係ないやろうが」

なんか色々の象徴的な台詞ですな。って関西弁で書いたって、関西出身の私に近しくなるだけで、それやったら頭ン中で勝手にやればということになるね。なんか基本的にキャラと合ってないような気がしますな。
やっぱ標準語でいいかも。いや、でも関西弁でやってみたいなあ。装置もあんまいらんしな。あー。

 

 

 

 

そらすこん

※この文章のような過去ブログの傑作選は、
「そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります」
というタイトルで一冊にまとめていますので、
ぜひ読んでくださいませ!

 

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