川上未映子

2014.12.22

スパゲッティ再訪

 

年末進行が縦横無尽に走りまくるこの師走の忙しい時期に書くことでもないかもしれないけれども、や、忙しいからこそのいま! 書かねばならないのかもしれず、というか、ここ最近このことを書きたくて書きたくてじつはうずうずしてたのよ。いったい何のことかというと、そう、それはスパゲッティのゆでかた&食べ方についてなのです。

 

もしかしたらこんなのはとっくに常識なのかもしれないけれど、わたしにとってはすこぶる画期的&目から鱗だったのです。わたしは1年365日のうちのじつに340日の昼食にスパゲティを作って食べる生活をしているのだけれども、このあいだ、ある発見をしたのやった。まあ時間もないし、ちゃっちゃと言ってしまうと、それは「スパゲティを半分に折ってからゆでると全方位的に最高」という、すごく単純なことなのやった。

 

スパゲティを半分に折ると素晴らしいのは、何よりもゆでるとき。

 

スパゲッティをゆでるときのあれこれは、少量の水でゆでる方法とか、レンジを使ったり容器を変えたりなんだりと、これまでもいくつかあった。けれども麺を半分に折るというのはもっと単純で、そう、小さな手鍋の本当に少しの水を沸騰させるだけで事足りるのである。

 

スパゲティが長いままだと上の部分がくにゃりんとなって滑り落ちるまで時間がかかるし、水はまあ少量でよくても、 お鍋じたいはある程度の高さがないとだめだった。しかし麺をあらかじめ半分に折っておくことによって直径20センチ足らずの手鍋で難なく茹でることができるようになる。これはこうして読んでみるよりもじっさいにやってみるとそのミニマムな感じの良さがよくわかる。グッバイ寸胴鍋!

 

水を沸騰させる時間が圧倒的に短縮できて最高なんだけれど、さらにすてきなのは食べるとき。折ったことによって麺が短くなると「フォークでくるくると巻きにくくなるんでは」「よって食べにくくなるのではないか」と思われるかもしれないけれど、そんなことはまったくなく、むしろ逆。まじで逆。まったく問題なくフォークにちゃんと巻くことができて、どころか、いつもは巻くのに2回転から3回転を要していたのが1回転ですみ、一度の食事の時間もわずかながら短縮できることになり、塵も積もれば理論でいくと、相当な時間を確保することになって、これも最高というわけなのだった。

 

そんなんとっくに知ってるわ、でしたらすみません……でも、わたしにとってはものすごい大発見だったのです。スパゲッティ好きのみなさまにスパゲティのべつの一面を伝えたくて、つい書いてしまいました。やったことない人はぜひやってみてね。

 

クリスマスもお正月もとくになく、今年もまたずるずると仕事をすることになりそうです。なぜならなぜなら……年末進行だっていうんでひいひい言いながら入稿ばっかりしてるのに、かと思うといくつかのゲラの返却が、なぜかどういうわけか、明けてすぐの1月6日とかに設定されているのだから、そうなるよね。「いえ、お正月は休みます」とはっきり言えない気の弱いわたしなのだった。

そして『きみは赤ちゃん』、おかげさまで8刷に! みなさん楽しく読んでくださってるみたいで、とてもとてもうれしいです。そして『すべて真夜中の恋人たち』もあっというまに5刷に……! 物語はちょうど12月、冬の、このあたり。しんしんと何かが残りますように、胸に、真夜中に。


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