川上未映子

2014.05.05

またねジュネーブ、かわいらしきすずらんのことなど

これを書いていたのはジュネーブで早朝の六時だったけれど、ばたばたと移動して、もうパリに着いて一日がたってしまった。

きのうのジュネーブ。午後からとても晴れて、それはもうすばらしい景色だった。森も湖もれんがも輝き、ロール地方へ行くチームについていきたかったけれど、時間が微妙にあわず、仕事もちょっとあったので対談の仕事を終えたあとホテルにもどって連載原稿を書きながら過ごした。

ジュネーブの街については、ホテルで書いた原稿(週刊新潮)に書いてしまったので、発売されたあとにでも、こちらでもっと詳しく旅行記めいたものを書きたいな、と思うくらいジュネーブはどくとくの強さと美しさと掟と自信をもって、それらにみなぎる街だった。石畳を歩きながら、石畳ひとつひとつ踏みしめて歩くにもすごく緊張したために、撮れた写真も数枚というあんばいになってしまった。

しかしそのまにまに街ではすずらんの花をみかけて、何でも5月1日には男の子が女の子にすずらんの花を贈るという習慣があるのだそう。すずらん、なんとかわいらしい花だろう! いつだったか、東京のハイアットリージェンシーだかセンチュリーハイアットだかシャングリラホテルだかのロビーにとてもたくさんのすずらんが飾られていたことがあったけれど、たくさんのすずらんを眺めながらとてもしあわせな気持ちになった。タワー状に積まれていてもすずらんはすずらん然とし、思わず耳を近づけたくなる。すずらんは葉の色もどくとくで、全体の大きさも曲線も、それから花びらのかたちは髪形としてもナイスナイス、ヴェリナイス。

そんなわけで数日の滞在だったけれど、初めて感じる種類の名残惜しさも。
でもそれは、ジュネーブでお世話になった方たちが大きいのだと思う。もちろんわたしたちは仕事でやってきたわけだけれど、でも、色々なところを案内し、楽しい話をしてくれ、さらには体調やこまかな変化へのお気遣いなどもいただいて、とにかくその滞在を少しでもすてきなもの、よいものにしようとしてくれるみなさんの愛情がひしひしと伝わってきて、本当にうれしかった。そういう記憶と訪れた街というものがひとつにしっかりと束ねられてゆくのだと思う。また、ジュネーブはまた来てみたい。できれば夏に花火のあがるころ。

 

 

とても青いレマン湖。

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そして旧市街地でみたたくさんのドアのなかからアンナカヴァン的なひとつ(ジュネーブは関係ないけれど、でも)。

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