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2006.05.15

もしもし、万能機関ですか

 インターホンが連続で鳴っているのに途中で気がついたので都合何回鳴っていたのかは不明、しかしながらその連続音でびっくりして起き、みるとまだ朝の5時。えー。んでちょっときちがいじみた、でもちょっぴり冷静さがまた病的なピンポン攻撃にびびりつつ受話器をとって「ハイ」とか云ったのだが無言。
 気色悪いっつうんで、うわーとか内心云いながら、受話器を戻す。んで段々もっと気色悪くなってきて、うちは一応オートロックなんですけどあんなもん何の役にも立たんし、もしかしたらピンポン鳴らしてた人は新聞屋さんに紛れたりして上がってきててこの扉のすぐ向こう、マジ玄関におるのかも知れん。どんなビジュアルがそこに展開されているのやと思うと覗き穴を見る勇気もなく、こわ。んでこちとらパンツ一丁やし、集合玄関に下りていくのとか無理すぎる。こわ。
 したら10分後にまたピンポンの連続が!なんでうちやねんな!コラ!この部屋のピンポンを鳴らすということは、どの部屋でもなく、この部屋を意識しなければピンポンは鳴らせないのであって、つうことは確実にこの部屋のピンポンをこの時間に鳴らしたいっていう確かな欲求に導かれて誰かは「呼ぶ」ボタンをプッシュしたのち、部屋番号をプッシュ、一回につき鳴るピンポンは一回だけなので、鳴り終わったあとにすぐさま「消」ボタンを押し、また呼ぶボタン→部屋番号→鳴る→消ボタン、うわ面倒くさッ、それを繰り返しているのであって。こわ。こういう所作は断じて酔っ払いの仕業などではないのであって。こわ。もう一回受話器をとり、今度は輩調で力強く「ハイ」。でも無言。こわ。どころか夜明け時の青い部屋で私はぽつんとピンポンピンポンピンポーンに周りを囲まれ、怖すぎる。なによ。で、何なんよ。落ち着いて水かなんか飲んで、溜息。んで、はっはーん。わかりました。これは誰かがやっぱ私を殺しにきたんちゃーん、とかざっくり思って、だって世の中の殺人なんてのは詰まるところすべて理不尽なもんであろう。まったき理不尽。どこの誰かはわからんし動機も想像もつかぬが、なんかそういうめぐり合わせでもあったんでしょうね。こうやって事件は現場で起こるわけですよ。都会の闇から愉快犯がむしゃくしゃして気晴らしに。などなど。この度私にお鉢が回ってきたという、それだけのことではないのかしら。でもやすやす殺されるのもいかがなもんか。友達と「強盗などが部屋に来て、殺されそうになったらまずどうするか」というシュミレーションを好んでしていたことがあるが、まったく役に立たないことが判明。玄関出たらなんでか武器や包丁持った人間がおることをゆるく想像してみて脱力。ちょっと在り得そうでこわいよね。こちとらパンイチで寝起き。しかもコンタクトレンズ未装着。視力0.03では戦いにはならない。基本テンションが違いすぎる。そういや私部屋にカーテンしてないしな、私の日頃の体たらくを誰かがどっかから見ててさ、んで見かねてこのアマだらだらしやがって死ねば?つって己の正義を根拠に、成敗欲っつうの、天誅下したい欲っつうの、おるやんか、そういうのに心身駆られた人がさ、んで掃除よろしく私をさくっと刺しにきたんちゃーん、とか思って、あーこのあとまだ生きてたらカーテン買いにいこ、とか思って、いや、もしかしたら若い頃に私の彼氏と浮気して、浮気したことは別段その女に関してはどうでもいいのだがあの日あの時あの女は私についた嘘が私をヤクザにしてしまったのだ、んで考えうる限りのひどい目に遭わせたあの女が頭おかしなってここを突き止めて、とか思って、それやったら全然いいが、あ、もしかしたらこれは宗教の勧誘かもしらんなーとか思って、普通の時間に来て普通の勧誘したってんなもんひっかからんから
「失礼します。こんな時間に参りましたのは当方の神からのあなた様限定の強烈な啓示がありましてうんぬん」とか青い光の中ゆわれたらばこっちも「まっ。私様限定の啓示。そうしましたらそば茶でも」なんてことになりかねんからこの時間の宗教勧誘ってなんかええんちゃうの、とか思って。でも受話器の向こうは無言なんでして。んで不安でありながらどこか確信に満ちた気色悪いピンポンが連続。こわ。
 というわけで私は面倒くさいの半分と滅茶苦茶な恐怖の気持ち半分で、私の気持ちどっちかにまとめようよ、とか思いつつ、ピッピと警察に電話した。スムーズ。世田谷警察に電話して事情を説明したら最寄りの派出所に回してくれて、そこでまた事情を説明。もちろん警察にとっては全然スペシャルな出来事でもなんでもないらしく、淡々としていて、でもま、とにかくこっちに来てくれとゆうたらオッケーだというので、これ以上ピンポンの音を聞きたくなかったので下に着いたら電話下さい、とお願いすると勤務時は携帯電話を持っていないという。ほー。意外であった。出先でなんかあったら携帯で誰かに連絡するのがまっさき好都合な時ってどうするんやろうか。携帯持たん理由がわからん。小学生が持つよりはるかに意義があるんやないの。
 でもって警官は比較的早く来たが、単なるいたずら、ということで落ち着いた。来た警官の靴があまりにもピカピカであって光りすぎで制服からモロに浮いててこれはいったい誰がどんな目的で磨き上げたのだろうと一瞬よぎる。奥様かしらん。しかし靴ってどうやって磨くのやっけ。けっこうややこしいのよね、などなど。んで最近こういういたずらつうか被害ってありましたか、なんでウチの部屋だったのでしょうか、こんないたずらオモロクもなんともないわ、この階までベランダ登ってこれますか、などと矢継ぎ早に質問&感想、するとこのような時間帯のいたずらってけっこうあるらしくって、「みなさん「なんでウチなんですか」って仰います」らしい。ほほほ。
 こうやって警官を呼んだり警察に電話したりしたときに思うことっていうのはいつも同じで、けっこうなタイムラグがあるのよね。警察やら救急車やら消防車やらっていうのは、私だけかも知れんが、それぞれの存在意義に即して超エキスパート、パッパとスーパー・リズミカルというか、万能機関というか、徹底的に迅速っていうか、もっと動きが秒単位なもんかと思ってたが、けっこうのんびりしていて、電話一本してもそれがどこかにまわされ、もう一度状況を説明しなならんかったり当然のことながら時間がかかる。緊急つっても時間がたくさんかかるわけで。私の今回の場合はただ気色悪いだけで一刻を争うもんではなかったけども、これが目の前で首から噴水よろしく景気よう血が噴出してたり、たんすや床がごうごうと燃えてたり、まさに目の前にへらへら笑う強盗変態殺人鬼が。などであったら、こんなに待たれへんし、っていうかまったく役にたたんよ。電話してる暇もないが、電話してから色々が到着する時間はこれの何十倍にも感じるやろう。うーむ。電話やネットやメールでの情報の動く速度、たとえば意味の解決の速さなど、なんたらアクセスの速度になんやかんやゆうても慣れてきている私は、こんなときに、やっぱ人って。物体であって。直接対峙するっていうのは。最低限の時間を経過しなあかんもんであって。当たり前のことだが移動するには時間がかかり、説明するのにもある程度の根気がいり、大きな意味での面と向かっての「対話」というのは、そうやって成されるもんだと改めて感じ入ったのでした。こうなれば「私とは言葉と時間です」やで。人間が人間に行為するわけであって、そこには万能機関なんてあるわけねえっすね。
 んでまる1日過ぎたる今も、私はカーテンを購入していないのであって。
 ほんま喉もと過ぎればなんたらで、死ぬまできっとこの体たらく。

投稿:by 未映子 10:00 PM [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク

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